地惑宇宙物質流入と地球生命史
近年の研究では、宇宙からの物質が地球に流入することで、生命に不可欠なリンや鉄などの元素が供給され、生命の進化が促進されたり、反対に大量の宇宙物質が短期間で地球に流入することで寒冷化や生物絶滅が引き起こされたりするといった説が注目されています。これは地球科学の中でも新しい視点であり、かつ非常に重要なテーマです。私たちは、日本の深海底に堆積した岩石を調査し、地球の歴史における宇宙物質の流入量の変化を追うための手法と分析技術を開発してきました。その結果、過去 3 億年間の深海底堆積岩から、これまで報告されていなかった小惑星の衝突が 3 回起きたことや、宇宙からの塵が大量に流入したイベントが 2 回あったことが明らかになりました。これらのイベントが発生した時代には、突発的な生物の絶滅や進化が記録されており、宇宙物質の流入量の変動が、地球の気温や大気の組成の変動と同じく、生命の歴史において重要な役割を果たしていることを示しています。このような研究成果により、令和 5 年度科学技術分野の文部科学大臣表彰「科学技術賞 (研究部門)」を受賞しました。
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