生物細胞の「柔らかさの変化」が細胞の急速な形態変化を可能にする
悪性化したがん細胞は非常に高い運動能力を持ち、血管内へと潜り込み、体内の別の組織へと転移します。この時、がん細胞は前方にブレブと呼ばれる大型の突起を活発に形成し、これを足として使うことで、自らの形態を大きく変形させながら狭い隙間を潜り抜けるように移動します。しかし、細胞がどのようにして急激なブレブの拡大を可能にし、自らの形態をダイナミックに変形させているのかは全く明らかになっていませんでした。大阪大学 微生物病研究所の青木 佳南 (研究当時 本学大学院理学研究院 生物科学部門 特任助教) と九州大学 大学院理学研究院 生物科学部門の池ノ内 順一 教授らは、拡大中のがん細胞のブレブ内では、細胞質の流動性が大きく上昇し、柔らかい細胞質領域が形成されていることを見出しました。さらに、拡大中のブレブ内にはカルシウムイオンが大量に流入しており、それにより細胞質の性質の変化が起こることが分かりました。この研究により、細胞は部分的に細胞質の柔らかさを変化させることで、細胞運動時の柔軟な変形を可能にしていることが初めて明らかになりました。
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