地惑サンゴ化石の古気候記録が語るメソポタミア文明の消長
西アジアのメソポタミア地域では、約 4,600 年前に史上初の帝国と呼ばれる「アッカド帝国」が誕生しました。この帝国は 400 年ものあいだ繁栄を続けましたが、突然に滅亡してしまいます。これまでの考古調査や古気候の復元記録によると、帝国の崩壊には「急激な乾燥化」が影響したことが分かってきました。しかし、乾燥化の気候メカニズムはよく分かっておらず、メソポタミア地域の社会が受けた影響も不明でした。そこで私たちは造礁性サンゴの化石に着目しました。アラビア半島のオマーンにて化石の発掘調査をおこない、アッカド帝国の滅亡前後に相当する「4,500 年前 〜 2,900 年前の試料」を良い保存状態で発見しました。サンゴ化石の地球化学分析をおこない、当時の海水温や塩分変動を復元したところ、約 4,100 年前の冬は他の時代とくらべて極めて乾燥・寒冷であったことを解明しました。乾燥・寒冷な気候によりアッカド帝国の農業社会は不振となり、帝国が滅亡したことが示唆されました。
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