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岩石循環科学研究室

スタッフ

  • 寅丸 敦志 教授
  • 池田 剛 准教授
  • 宮本 知治 助教
  • 大橋 正俊 助教

岩石から固体地球の運動を探ろう

 固体地球の多くの部分を構成している岩石は、地球の長い歴史の中でさまざまな運動を経験してきました。その運動をいろいろな手法を用いて理解し、固体地球の営みの背後に隠されている普遍的法則性を見つけ出すのが私たちの研究室の目的です。研究においては、従来の手法や考え方にとらわれない手法の開発、モデルや考え方の提出、天然から新しい法則性を示唆する事実を発見することが大変重要であると考えており、このことを意識した研究・教育を行っています。

火山噴火メカニズムの研究

低粘性の玄武岩質マグマが発泡した結果にできた軽石(ハワイ)。
低粘性の玄武岩質マグマが発泡した結果にできた軽石(ハワイ)。

 火山噴火は、マントル中でのマグマの発生・集積・移動過程、結晶化や対流などのマグマだまり過程、マグマの地殻内での上昇の結果起こる地表現象です。火山噴火を理解するためには、こうしたマグマが関与するあらゆる過程を理解する必要がありますが、本研究分野では主として次の研究を行っています。

岩床に見られる柱状節理と縞状構造(佐渡島)。縞の間隔は等比数列に従う。
岩床に見られる柱状節理と縞状構造(佐渡島)。縞の間隔は等比数列に従う。
  • 天然から採取した軽石や溶岩、マグマだまりの化石である深成岩など火成岩の物質科学的分析をおこない、得られた化学組成や形態学的データを解釈し、火道内部の上昇速度やマグマの冷却過程などマグマの運動を推定します。
  • 物質科学分析の基礎となるマグマの結晶化と発泡過程の相変化カイネティックスを研究しています。これは未解決な部分が多く、計算機シミュレーションや室内実験によって理解を確かなものにしていきます。
  • 気泡や結晶を含むマグマは多相流体と呼ばれ、複雑な性質を示し、噴火現象の多様性と密接に関係しています。この多相流体の流体力学的振る舞いを理解するために計算機シミュレーションやアナログ実験(マグマと似た振る舞いをする取り扱いやすい物質用いた実験)を行っています。
  • 以上のアプローチを総合して、噴火している火山の地下で何が起こっているか理解していきます。さらには地表で見られる多様な噴火様式や噴火の時間的推移を支配している要因を特定し、噴火予測の基礎を確立することを目指しています。

岩石パターンの研究

 天然にはさまざまな岩石パターンが存在します。例えば、マグマの冷却固結による柱状節理やリーゼガングリングと呼ばれる反応と拡散によって生じる縞状パターン、流動変形による墨流しのような構造です。また、多結晶体が織り成す岩石組織もパターンの一つです。これらの岩石パターンの形成過程については理解が遅れており、本研究分野では天然から情報を抽出する記載的研究はもとより、計算機シミュレーションや室内実験を用いて、その形成過程について実証的研究を行っています。

固体地球の流動と化学反応のカップリング

岩石の褶曲 長崎県西彼杵
岩石の褶曲 長崎県西彼杵

 古来より不動の象徴と詠まれてきた大地も、20世紀後半には年間数センチメートルの単位で相対運動していることが明らかになりました。平行運動でなく相対運動であるということは、固体地球が伸びたり縮んだりしているということです。浅所においてはその歪みを断層という岩石の脆性破壊が担っていますが、深所では塑性変形が卓越しています。塑性変形する岩石では、鉱物どうしの化学反応や流体と岩石の相互作用などの様々な素過程が、岩石組織を形成していきます。

 当研究室では、過去の深所で作られた岩石(変形岩、変成岩)を対象として、深所で実現されていた温度、圧力などといった状態量、およびそこで支配していた素過程を明らかにすることを目的としています。

岩石の成因と履歴の解明

東南極ナピア岩体ハワードヒルズにおける被熱履歴。始生代の地殻の最高到達温度が10億年かけて低下している様子がわかる。
東南極ナピア岩体ハワードヒルズにおける被熱履歴。始生代の地殻の最高到達温度が10億年かけて低下している様子がわかる。

 岩石は主要10元素とその他の微量元素から構成されます。その量比には規則性があり、その規則性は岩石を構成する鉱物の種類と量比に、そして岩石の成因に関係します。すなわち対象が火成岩ならば起源となるマントルの違いやその後の分化の過程が岩石の化学組成を特徴づけますし、変成岩ならば変成作用における物質移動・同位体均質化が読みとれます。いずれも地下深部における現象で直接観察することが出来ませんが、それらを解明するために岩石を元素レベルに解像して目で見るのです。そして岩石が経験した事象を履歴として地史を編むのです。

 岩体の地史、そして地球の歴史を解明するためには、それぞれの現象が何時起こったのかも重要な情報になります。そのため放射性核種の崩壊を利用した年代測定を行う必要もあります。一連の岩石の組成変化から岩体の成長の様子を、そして年代測定で岩体形成の時期を特定して、履歴を明らかにするのです。

 岩石成因を考察する上で、岩石の組織もまた重要な情報源です。分析値は、様々な情報を持った岩石の初生的特徴を定量化した結果ですので、分析の際に数値では表現できない情報を消去しています。岩石が成長した過程を残す組織、そしてその結果である組成、その両者を有効に矛盾無く体系立てることで岩石成因の真実は探られるのです。