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気象学・気候力学研究室

スタッフ

  • 川村 隆一 教授
  • 川野 哲也 助教

対流スケールから全球スケールまでの気象現象を探求する

 対流圏で起こる気象現象は、私たちの日常生活と深いかかわりがあるので、対流圏の気象現象の研究は気象学者の興味の対象として重要であるばかりでなく、気象災害の減災・防災や異常気象の予測に対して社会からの強い要請があります。また気候の将来予測においては、大気循環と海洋循環との相互作用などの気候システムの理解が益々重要となっています。

 本研究分野では、対流圏の気象現象を幅広くカバーし、また異常気象や気候変動の研究もしています。研究対象とする現象を水平スケールという観点から見ると、地球規模の大気大循環や惑星波のスケール(10,000km)から、高・低気圧波動や台風、梅雨前線のスケール(2,000km~200km)、竜巻や個々の対流雲のスケール(200~20km)までをカバーしています。また、研究対象を領域という観点から見れば、赤道域から中緯度、極域までを含んでいます。以下では、もう少し具体的に水平スケールごとに研究内容を紹介しましょう。

モンスーン循環と異常気象

図1 日本に寒冬をもたらす北半球規模の大気循環変動。陰影は500hPa高度偏差。ユーラシア北部を横切る寒帯前線ジェットの蛇行が生じています。

 モンスーン循環とは季節によって風系が反転する循環のことです。このモンスーン循環は対流圏の大気大循環を特徴づける一大システムであると同時に、アジアモンスーンやオーストラリアモンスーンなど各地域で特徴的な循環システムが存在しています。人口が集中しているモンスーン地域は大規模気象災害に脆弱であり、モンスーン変動は洪水や旱魃による広域的な人的被害・農作物被害などをもたらすため、実用的な災害予測が社会から要請されています。地球観測衛星によるリモートセンシング、数値モデルやデータ同化手法の急速な発展、そして様々な観測プロジェクトにより、モンスーンシステムの多面的な動態が明らかになりつつありますが、モンスーンシステムの揺らぎをもたらす、大気陸面相互作用並びに大気海洋相互作用が複雑に絡み合った現象を紐解いていく試みが益々必要とされています。研究室では、モンスーン変動と関連する異常気象のメカニズムの解明を目指しています。

中緯度域の大気海洋相互作用

 熱帯と比べて中緯度では一般的に海面水温が低く、活発な積雲対流活動も弱いため、大気海洋相互作用と言っても、基本的には大気の強制に対して中緯度海洋は従属的に応答すると考えられてきました。しかし、冬季東アジアモンスーンに伴う北西季節風が卓越する北東アジアでは、西岸境界流である黒潮や対馬海流によって低緯度から多量の熱輸送が生じており、大陸からの寒冷で乾燥した季節風が黒潮・対馬海流上に吹き出すことによって、それらの海域で大気海洋間の活発な熱交換(hot spot)が生じています。中緯度大気海洋相互作用は未解明の部分が多く、観測データの解析や数値モデル研究などを通して更なる理解が求められています。

台風や爆弾低気圧の擾乱活動と大規模循環との相互作用

図2 爆弾低気圧情報データベースを構築し公開しています。http://fujin.geo.kyushu-u.ac.jp/meteorol_bomb/index.php

 台風と急速に発達する温帯低気圧(爆弾低気圧)は双璧をなす総観規模擾乱です。両者の擾乱はともに直接的な気象・海象災害をもたらすだけではなく、対流圏上層に強い発散場を形成するために、定常波(ロスビー波)の励起を通して遠隔影響をもたらすポテンシャルをもっています。具体例として、台風の遠隔影響で日本付近の梅雨・秋雨前線が活発化することが報告されています。また、ロスビー波束の伝播によって異常気象の原因となるブロッキング現象や、成層圏突然昇温発生の引き金となる可能性も考えられます。再解析データ等の解析や、大気大循環モデル・領域気象モデルを用いた数値実験に基づき明らかにし、短期天候予測の改善ならびに減災・防災に貢献していきます。

梅雨前線付近のメソスケール気象擾乱

図3 九州北部豪雨発生時の700hPa面の相当温位空間分布。東シナ海上に(いわゆる)湿舌が出現しています。

 九州地方はその地理的および気象学的環境条件から、梅雨期に集中豪雨が数多く発生します。メソスケール現象というのは水平スケールが2,000kmから2kmまでの気象現象を含んでいて、さらに3つのサブグループ(メソα、メソβ、メソγ)に分類されます。梅雨前線付近の気象擾乱で重要なのは、メソβスケール(水平スケール200km~20km)の擾乱であり、本分野ではそれらの発生要因の研究を行っています。過去の豪雨事例のなかから、1993年8月に発生した鹿児島豪雨、1997年7月の出水豪雨、1999年6月の福岡豪雨、2003年7月の福岡豪雨、水俣豪雨などを研究対象として取り上げました。これらの研究を通じて地形によるメソβ線状収束帯の形成、梅雨前線付近の二次的なメソβスケール収束帯の形成、メソ対流系と呼ばれる対流雲の集団の形成が重要であることが分かってきました。

竜巻の研究

 竜巻といえば北米大陸の中西部で発生する巨大竜巻(トルネード)を連想しますが、規模は小さいものの、日本でも台風接近時や寒冷前線通過時に竜巻が数多く発生しています。近年、特に強い竜巻の発生が目立ち、2006年9月には延岡で1名、同年11月には北海道佐呂間町で9名の犠牲者を出しました。本研究分野では2004年6月27日、佐賀市で発生した竜巻を対象として、数値モデルによる再現実験と感度実験を行い、それらの結果の解析から、竜巻の発生にとって地表付近の境界(佐賀竜巻の場合には梅雨前線)が非常に重要であることを示しました。そのような境界(前線、ドライラインなど)の重要性は北米大陸のトルネードについても指摘されています。その意味で本研究は1事例解析にとどまらず、竜巻発生の普遍的原因の解明にも大きな寄与をしています。

冬季北陸の雪雲の微物理的・電気的構造の研究

図4 ビデオゾンデを飛揚する直前の様子です。

冬季に西高東低の冬型気圧配置になるとシベリアから寒気が吹き出します。それと同時に、日本海上では急激な気団変質が進行し、その結果発生・発達した雪雲は日本海沿岸部に降雪をもたらします。この降雪機構を知るためには、雪雲内の微物理構造、すなわち雪や霰の空間分布を測定する必要があります。本研究分野では「ビデオゾンデ」という特殊な観測機器を雪雲内に飛揚し、雪雲内の微物理構造を直接観測する研究を行っています。これまでの観測から、降雪雲のタイプによって雪や霰の空間分布が異なっているという興味深い結果が得られています。また、冬季北陸の雪雲は豪雪をもたらすだけでなく、「一発雷」という単発だけれども電流値の非常に大きな雷を発生させることでも有名です。雲内の電荷の主な担い手は雪・霰であることが知られていますが、ビデオゾンデは粒子の種類・形状・サイズおよび電荷量を同時に測定することができるので、ビデオゾンデ観測によって冬季北陸の雪雲の降雪機構や雷活動の解明を目指しています。

図5 ビデオゾンデで観測された雪雲内雪片(左)と霰(右)。