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惑星系形成進化学研究室

スタッフ

  • 町田 正博 教授
  • 岡﨑 隆司 准教授
  • 山本 大貴 助教

惑星系の形成・進化過程の解明をめざす

 太陽系は、太陽という中心星のまわりを公転する惑星、準惑星、小惑星、太陽系外縁天体などや、惑星のまわりを公転する衛星などから成るシステムです。最近の天文観測の発展により、太陽系以外にも中心星のまわりを惑星が公転する惑星系が多数あることが分かってきました。当研究分野では、惑星系の形成・進化過程を解明することを目指して、以下のような研究を行っています。

分子雲の中で星や惑星が誕生する過程の数値シミュレーションによる研究

 星や惑星系は、分子雲が自分自身の重力によって収縮することにより、形成されます。下の図は、その過程をスーパーコンピューターで数値シミュレーションした結果を示しています。左側の図で、白と黒の線は磁力線を、オレンジ色の部分は原始星アウトフローを示しています。星は誕生する瞬間に、磁場の力(ローレンツ力)によってガスを放出します。このガスの速度は、時速10万キロメートル以上です。図のオレンジ色の部分が放出されたガスに対応します。また、右下の図から円盤の中で木星のようなガス惑星が2つ誕生しているのが分かります。

原始惑星系円盤内のダストの挙動と微惑星の形成過程の理論的研究

 惑星は、中心星の周りを公転する原始惑星系円盤を母体として生まれたと考えられています。原始惑星系円盤の組成の大部分は水素、ヘリウムなどのガスですが、それ以外に天然に存在するほとんどの元素やその同位体が含まれています。円盤の内側ではケイ酸塩や鉄など、外側ではそれに加えて水の氷などが固体微粒子として存在します。固体微粒子は、ガスによる摩擦力や重力などを受けながら移動しますが、やがては固体微粒子集団の重力で集まって微惑星と呼ばれる小さな天体になると考えられています。これらの過程を、ガスとダストの混相流体の安定性解析や、数値シミュレーションなどで調べた結果、固体物質の割合が太陽組成から求められる値の場合は、円盤乱流により微惑星の形成は阻害されることが明らかになりました。固体物質の移動やガスの散逸に伴って、固体とガスの比が変化することにより、微惑星形成が始まったと考えられます。

太陽系物質の元素・同位体分析による実験的研究

 太陽系物質の化学組成や同位体組成は多様性に富み、これらは物質の起源や進化過程を知る手がかりとなります。一例として、希ガスの元素組成を下図に示します。太陽の組成は図中右上に位置します。太陽より左下に月の表土、宇宙塵、コンドライト隕石中のコンドリュールがあり、これらの物質には元素分別した太陽風起源の希ガスが含まれており、物質が太陽風にさらされたことを示しています。一方、コンドリュールの隙間を埋める微粒子の集合体(マトリックス)は太陽組成に比べて重い元素に富む組成を持ち、これは太陽系星雲起源と思われるガスを含んでいるためです。また、玄武岩質の火星隕石には火星大気に似たガスが含まれていますが、これは火星表面で衝撃の際に大気が岩石中に混入したためです。このような化学・同位体組成などを手がかりに、物質の起源と進化過程の解明を目指しています。

初期太陽系を模した環境下での実験的研究

 太陽系形成初期には希薄なガスと固体物質ダストからなる原始太陽系円盤が存在し、その中で起こった様々な化学反応を通じた惑星材料物質の形成・進化は、現在の太陽系の化学的多様性に反映されています。そのため原始太陽系円盤で起こる様々な化学反応に注目し、太陽系固体模擬物質を用いて宇宙環境を模した環境下での加熱実験をおこなうことで、隕石などの天然サンプルの分析結果から初期太陽系の情報を読み解くことが可能です。具体的には、下図のような太陽系円盤を模した低圧環境での加熱が可能な装置を構築し、様々な温度・圧力環境下で模擬物質を加熱することで、進行する化学反応の機構・速度を決定します。円盤環境での化学反応のモデル化、天然サンプルとの比較を通して化学反応から太陽系形成初期の環境を推定する試みをおこなっています。

太陽系円盤を模した低圧環境での加熱が可能な加熱炉