ビッグバン後、膨張する宇宙の中でダークマターの重力により水素やヘリウムが集まり、宇宙最初の天体「ファーストスター」が誕生します。ファーストスターは重く寿命が短いため、超新星爆発によって重元素を宇宙に放出します。こうして重元素を含むガスからは太陽のような星が生まれ、これらの星も最終的に重元素を放出することで、宇宙は次第に多様な元素を含む環境へと変化していきます。重元素を十分に含むガスから形成された星の周りには円盤ができ、その中で惑星が誕生すると考えられています。本研究分野では、宇宙の進化の中で、最初の星から現在の星と惑星の形成に至る過程を理解することを目指し、以下のような研究を行っています。
" 宇宙最初の天体であるファーストスターは、ダークマターハロー(ミニハロー)内で主に水素からなるガスが重力収縮して誕生します。従来の研究では、最初にできた星の周囲に回転する円盤が形成し、その円盤の分裂によって複数の星が生まれると考えられていました(図1)。しかし、初期宇宙には微弱な磁場が存在すると考えられています。磁場を考慮したシミュレーションでは、その影響により円盤形成や分裂が抑えられ、単一の大質量星が形成される可能性が示されています。このような大質量ファーストスターは、最終的に超巨大ブラックホールへ進化すると考えられています。私たちの研究室では、初期宇宙における天体形成の解明に取り組んでいます。

星は、分子雲コアというガスのかたまりが自身の重力によって収縮することで形成します。図2はその過程をスーパーコンピューターで計算した結果です。図中左側の白と黒の線が磁力線、オレンジ色の部分が原始星アウトフローを示しています。星は誕生時に磁場の力でガスを放出し、その速度は時速10万キロメートル以上に達します。また、図2右下からは、円盤内で木星のようなガス惑星が2つ形成していることが分かります。

図3は、オリオン星形成領域におけるALMA望遠鏡観測の模式図です。図の中心から左上・右上方向に若い原始星が存在し、そこからガスが放出されている様子が見られます。さらに、アウトフローの先端(右下)では、新たな星が誕生しつつあることが分かっています。このように、数値シミュレーションと観測を用いて分子雲コアの収縮から星と円盤の形成、さらに多様な惑星系の形成過程を解明しています。

惑星は、生まれたばかりの星の周りで形成する原始惑星系円盤内で誕生すると考えられています。図4はシミュレーションで得られたガス惑星とその周囲の円盤の構造を示しています。赤い線はガスの流線で、誕生したばかり惑星の上空からガスが流れ込む様子を示しています。オレンジ色の円盤領域では、ガス惑星に加えて衛星も誕生すると考えられています。図5は、ALMA望遠鏡で観測された若い星の周りの円盤を、スパースモデリングによって再構成した画像です。リング状の構造は中心付近でダスト(固体微粒子)が枯渇していることを示し、棒状の構造は円盤を横から見たものです。棒状構造の凹凸は円盤に複雑な構造が存在することを示しています。これらの構造の成因は完全には解明されていませんが、惑星が形成されつつある段階を捉えていると考えられています。また、この観測から従来考えられていたよりもかなり早い段階で惑星形成が始まることが分かっています。

このように私たちの研究室では、数値シミュレーションと観測を組み合わせ、理論と観測の両面から宇宙の進化を解き明かしています。宇宙最初の星から現在の星・惑星系までを宇宙の歴史の一つの流れとしてとらえ、この宇宙で天体がどのように生まれ進化するのかを明らかにすることを目指しています。