
令和8年4月、九州大学大学院理学研究院町田正博教授の研究室所属の大学院理学府博士課程3年の野﨑信吾氏、名古屋大学大学院理学研究科の犬塚修一郎教授の研究グループは、『星のゆりかごに広がる放射状ガス構造の起源を解明 大質量星や星団が生まれる環境を読み解く鍵に』のプレスリリースを行いました。
《研究の概要・ポイント》
星は、宇宙の冷たいガスの集まりである分子雲の中で生まれます。特に、中心の高密度領域に向かって、複数の細長いガス構造が放射状に集まる「ハブ・フィラメント系分子雲」が観測で見つかっており、大質量星や星団が生まれる場所として注目されています。しかし、このような放射状に整列したフィラメント状ガス構造がどのように作られるのかは、これまでよく分かっていませんでした。今回の研究では、磁場がくびれた形を持つ分子雲に、高速の星間衝撃波がぶつかる状況に着目しました。特にスーパーコンピュータを用いた3次元磁気流体数値シミュレーションによって、星間衝撃波と砂時計型の磁場構造を持つ分子雲との相互作用を調べました。その結果、衝撃波によって押し集められたガスが、曲がった磁力線に導かれて中心へ流れ込むことで、放射状に整列した複数のフィラメント状ガス構造が発達することがわかりました。さらに、星の材料となる高密度ガスは、分子雲全体から一様に集まるのではなく、フィラメントに沿って選択的に中心へ運ばれることも明らかになりました。この成果は、大質量星や星団がどのような環境で生まれるのか、また星形成がなぜ非効率なのかを理解する手がかりになると期待されます。

野﨑さん:
今回の研究では、観測で見えている特徴的なガス構造が、どのような物理過程で作られるのかを示すことができました。放射状に並ぶフィラメントは、一見すると特殊な構造に見えますが、衝撃波と磁場の組み合わせによって生まれうることが分かりました。研究を進める中では、シミュレーション結果を単に計算として眺めるのではなく、実際の観測で見える構造やガスの運動と結びつけて考えることに面白さを感じました。また、複雑に見える天体の構造にも、比較的シンプルな物理過程によって理解できる可能性があることが、この研究の面白さだと思います。今後は、さまざまな形のハブ・フィラメント系分子雲を比較し、大質量星や星団が生まれる環境をより統一的に理解することを目指したいです。
町田教授:
野﨑君は私の指導学生ですが、今回の研究は他大学の研究者との共同研究であり、実は私は研究には直接関わっていません。野﨑君は非常に幅広い研究分野に興味を持っており、私との共同研究に加えて、名古屋大学、理化学研究所、筑波大学などの研究者とも、それぞれ異なるテーマで数多くの研究を進めています。指導教員から独立して自ら研究テーマを構築し、主体的に研究を推進していく姿勢は大変素晴らしいと思います。
理学部では、野﨑君のように自分の興味に応じて自由に研究を進められる環境があります。たとえ指導教員の研究テーマと異なっていても、関連する分野の研究者と協力しながら、自分の興味に基づいて研究を発展させることができます。自ら興味を持ち、主体的に研究に取り組む姿勢を大切にしてほしいと思います。
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