このたび、理学研究院生物科学部門の島崎研一郎教授が「日本植物学会賞(学術賞)」を受賞しました。この賞は植物科学の分野において国際的に高く評価された研究を行った者に授与されるもので、島崎教授は「青色光による気孔開口の分子機構」を解明したことにより本賞を受賞しました。
研究対象である気孔とは、植物の葉の表面にある小さな穴のことです。植物は気孔を開けることで、光合成に必要な二酸化炭素を取り込んだり、根から水を吸い上げるために水蒸気を放出したりしています。島崎教授は、フォトトロピンというタンパク質が青色の光を検知し、その情報が伝達されて気孔が開く仕組みを明らかにしました。
気孔が開く仕組みについて、孔辺細胞内にK+がとりこまれることで浸透圧が増加し、水が流入してきてその膨圧によって気孔が開くことが分かっていましたが、なぜK+が取り込まれるかは謎でした。島崎教授らは、青色光を受けたフォトトロピンから情報が伝達され、H+が細胞外へ放出されることで膜内の電位がマイナスになり、K+が取り込まれることを発見しました。
島崎教授は研究を始めた当時を振り返り、「十分な知識も設備もなく、手探りで実験を進めていました」と苦労を語ってくれました。「しかし、スタッフや大学院生をはじめとした優秀な若手に恵まれて、ここまで研究を進めてくることができました。これまでのメンバーを含め、研究室全体で受賞した賞だと思っています」と受賞の喜びを語っています。
フォトトロピンを介した光情報の伝達は、気孔の開閉だけでなく植物のいろいろな運動や形態形成に関わることが明らかにされています。今後について「青色光による気孔開口の分子機構の全貌を解明し、植物細胞における光情報伝達系のモデルを提示したい」と話しています。
なお授賞式は、日本植物学会第75回大会(東京大学駒場キャンパス、平成23年9月18日)で行われる予定です。
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