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イベント情報の詳細

イベント名 地惑教室談話会
マグネタイトの高圧下その場磁気ヒステリシス測定実験: 火星地殻磁気異常のソースについて
イベント種類 講演会
講演者(講師)
イベント詳細 佐藤雅彦. 近年の惑星探査により,火星には多くの磁気異常が存在する事が明らかになった(e.g.,Mithchell et al., 2007).ここで磁気異常とは,地殻岩石の磁化を起源とする磁場の事であ る.火星では金属コアのダイナモ作用が約 40 億年前に停止したと考えられ,現在グローバ ルな磁場は存在していない(Acuna et al., 1999).従って,観測されている火星磁気異常 を説明するには,40億年前以前に磁化した地殻残留磁化が現在まで安定に保持されている 必要がある.本研究では磁気異常のソースを明らかにするために,“火星地殻内で 40 億年 間安定に残留磁化を保持することが出来る磁性鉱物の種類”を実験的に決定した.磁場デ ータの解析(Nimmo and Gilmore, 2001; Voorhies, 2002)や熱史モデル計算(Dunlop and Arkani-Hamed, 2005)の結果から,磁気異常ソースは約50km程度までの地殻深部に分 布していると考えられている.地殻深度に応じて温度・圧力が変化するため,磁気異常ソ ース鉱物の決定には,残留磁化安定性の指標となる磁気パラメータ(保磁力,飽和磁化) の温度・圧力依存性を知る必要がある.磁気パラメータの温度依存性は,系統的な実験が 行われ多くのデータが得られている(Dunlop and Ozdemir, 1997).一方でその圧力依存 性は,測定実験技術等の困難からほとんどデータが得られていない(Carmichael, 1969; Gilder et al., 2002).そこで本研究では,高感度磁化測定が可能な MPMS 帯磁率計と専用 に開発した非磁性高圧セル(Sato et al., 2012)を組み合わせる事で,高圧下その場磁気ヒ ステリシス測定実験を行った.火星地殻中に存在する主要な磁性鉱物と考えられるマグネ タイトを実験試料として用いた.磁性鉱物の磁気的性質は,その粒径に対応して系統的に 変化する事が知られているため,多磁区(MD),擬似単磁区(PSD),単磁区(SD)試料 に対応する粒径のマグネタイトを使って実験を行った.実験の結果,MD 及び PSD 試料の 保磁力は 1GPa までの圧力範囲で単調に増加し(約+90 %/GPa),一方で SD 試料の保磁力 は 1GPa までの圧力範囲でほぼ一定値であることが分かった.飽和磁化は,1GPa までの 圧力範囲で一定値であった.本実験から得られた磁気パラメータの圧力依存性及び,過去 の研究から得られている温度依存性を用いて,火星地殻内での残留磁化緩和時間の計算を 行った.火星地殻内での温度・圧力変化は,観測等から制約されている適当な物理パラメータを使って計算した.計算の結果,粗粒マグネタイト(MD 及び PSD)の残留磁化は 40 億年間の間に消磁されてしまうが,細粒マグネタイト(SD)は 40 億年間安定に残留磁化 を保持可能である事が分かった.従って,火星地殻磁気異常のソースは SD 磁鉄鉱であり, 過去の火星地殻は細粒マグネタイトを晶出するのに適した化学組成・酸化還元状態であっ た事が示唆される.
対象 教職員向け 在学生向け
使用言語
キーワード
開催期間 2013年5月31日 16:30 〜 17:30
会場
会場名
地球惑星科学専攻第一講義室(2255)
定員 なし
申込み方法 事前申込み不要
お問い合わせ先
担当
Liu Huixin
TEL
4340
E-Mail
huixin◎serc.kyushu-u.ac.jp
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