イベント名 |
第6回地球惑星科学談話会 組成データの解析法:新旧手法による古気候と構造場判別の比較 |
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イベント種類 | セミナー |
講演者(講師) | 太田 亨(早稲田大学) |
イベント詳細 | 一般論として、堆積物の地球化学データなどの組成データに対して、統計解析や多変量統計解析、人工知能(AI)を適用することはできない。これは、組成データが実数(Real Number)ではなく、標本空間(Sample Space)が実空間ではないからである。そのため、組成データでは四則演算、単位元(ゼロ)、距離関数などが未設定の状態にある。さらに、組成データには定数和制約(constant-sum constraint)があるため、統計解析や多変量統計解析、AIなどの前提条件を満たさない。しかし、近年開発された対数比解析や単体解析の発展により、多変量統計解析やAIを堆積物の地球化学組成に適用できるようになった。本講演では、多変量統計解析とAIが堆積物の地球化学に与える影響について、具体的な例を挙げて議論する。 多変量統計解析の一例として、土壌の地球化学組成から抽出した風化指標W値を紹介する。まず、未風化な火成岩とその風化生成物の地球化学データを汎世界的に収集した。このデータベースに対して、単体解析によって主成分分析を行った。その結果、「原岩の種類による化学変化」と「風化による化学変化(W値)」が数学的に分離された。従来の風化指標では両者の情報を分離することは困難であった。一方、W値は風化作用のみを定量化できる指標であり、W値を世界中の現世の土壌に適用したところ、その土壌が形成された気候を推定できることがわかった。したがって、古土壌や泥岩試料に応用すれば、W値は古気候の推定に利用できる。 次の例では、堆積物の地球化学組成からテクトニックセッティングを識別するためのAIの応用を示す。今回は、島弧(58)、陸弧(89)、クラトン(99)、衝突帯(59)に分布する堆積物の地球化学データを汎世界的に収集し、機械学習の一種であるランダムフォレストを実施した。従来の判別図ではテクトニックセッティングの正答率は47〜67%であった。これに対し、対数比解析を用いたランダムフォレストの結果は93.4%の正答率を示した。このスキームを応用すれば、堆積岩の組成から当時のテクトニックセッティングを推定することができる。 今後、対数比解析と単体解析を通して、多変量解析やAIを堆積物地球化学に応用することで、様々な地質学的問題を解決できる可能性がある。 |
対象 | 教職員向け 在学生向け |
使用言語 | 日本語 |
キーワード | |
開催期間 | 2024年1月16日 16:40 〜 17:40 |
会場 |
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定員 | なし |
申込み方法 | 事前申込み不要 |
お問い合わせ先 |
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