イベント名 |
2016年度第7回地惑教室談話会 地震波速度から見る東北本州弧の地殻構成と地殻進化 |
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イベント種類 | 講演会 |
講演者(講師) | |
イベント詳細 | 講師:石川正弘 (横浜国立大学) 要旨: 日本列島の地殻構成岩石を解明することを目的として,これまで約20年間,独自に実験装置を開発し,地殻深部相当の高温高圧下で岩石の弾性波速度測定を行ってきた.今回は東北日本を例に,地震波速度から見た地殻構成と地殻進化についての研究成果を紹介する. 捕獲岩は直接観察できない地下深部の構成岩石を知る手がかりになる.秋田県男鹿半島に産出する一の目潟捕獲岩の岩石学的記載や化学分析結果に関する様々な岩石学研究が行われており,東北本州弧の地殻構成岩石モデルが提案されてきた(Aoki,1971; Takahashi, 1978; Kushiro, 1987など). 1990年代に、東北日本では大規模な地殻構造探査が行われ,上部地殻?下部地殻のP波速度構造断面が得られた (Iwasaki et al. 2001).そこで,一の目潟捕獲岩(はんれい岩類,角閃岩,レルゾライト,花崗岩類)のP波速度(Vp)を測定し, P波速度構造と比較した.その結果,東北本州弧の下部地殻は層厚15 kmの超塩基性岩・塩基性岩(角閃石はんれい岩や角閃岩等: 磁鉄鉱が比較的多いためにSiO2含有量が通常のはんれい岩類より少ない)で構成されることが示された(Nishimoto et al., 2005). その後,東北日本では3次元地震波トモグラフィーが得られた(Nakajima et al., 2001).そこで実験装置に改良を加え, VpとVsの同時測定を行い,3次元地震波トモグラフィーと比較した(Nishimoto et al., 2008).その結果,下部地殻に関して,日本海沿岸は角閃石輝石はんれい岩,東北本州弧主要部は角閃石はんれい岩で構成されることが示された.鳥海山周辺と奥羽脊梁山脈地域の火山体周辺は,低速度異常を示しており,角閃石はんれい岩が部分融解状態にあると推測された.一方,北上山地の下部地殻は東北本州弧の中でも特異であり,石英を含む岩石(例えば石英閃緑岩や花崗岩質岩)が主要な構成岩石となっていると結論した.東北本州弧の下部地殻の不均質性は地質区分と明らかな対応が見らる(北上山地の古い地殻,背弧海盆拡大期に形成された地殻,奥羽脊梁山脈での火山体の発達に対応する現在の地殻). 最近では,防災科学技術研究所の日本列島下の三次元地震波速度構造(Matsubara and Obara, 2008)を用いて北上帯の地殻および上部マントル構造の構成岩石を検討した(石川ほか, 2015).その結果,北上帯に広く露出する前期白亜紀アダカイト質累帯花崗岩体が地殻マントル境界まで"根"を持つ岩体であることが示された.さらに最上部マントルは斜方輝石岩から構成されていることも示された.つまり,沈み込んだ海洋地殻が部分融解して形成されたアダカイト質マグマが海洋スラブから上昇し,マントルウェッジを通過しながらそのシリカに富むマグマが周囲のかんらん岩と反応して斜方輝石岩を形成したことを示唆している.最終的にはアダカイト質マグマは下部地殻・上部地殻に貫入したと解釈される.このことは,北上帯に露出する前期白亜紀アダカイト質累帯花崗岩体がスラブメルティング起源であるとういう岩石学的解釈(Tsuchiya et al., 2005)を支持する。 このように地殻の構成と進化を地震波速度から読み解くことは可能であり、地質学に基づく地質構造区分発達と組み合わせることにより、下部地殻までを含めた地殻進化を議論することが可能である。 |
対象 | 教職員向け 在学生向け |
使用言語 | |
キーワード | |
開催期間 | 2016年11月8日 16:30 〜 17:00 |
会場 |
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定員 | なし |
申込み方法 | 事前申込み不要 |
お問い合わせ先 |
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