氏名 | Gさん |
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学科・専攻、学年 | 地球惑星科学科 4年 |
留学先(国名) | 清華大学(中国) |
留学期間 | 令和6年9月1日~令和7年7月3日 |
清華大学の土木工程系で建築物の耐震構造、災害に強いまちづくりなど防災を軸に学んだ。中国では「地震は予測できないもの」として認識し、地震が発生する理論や現象を解明するよりいかに減災できるか、地震に強い建物を設計するかに注目していた。その減災や設計において多くの例で日本の緊急地震速報や設計基準を取り上げており、世界的に見ても日本の地震に対する意識、研究、防災技術は先進的であることを再認識した。そのほか、中国語及び英語のレベル向上に努め、中国人や他国の留学生とのかかわりの中で、世界における日本という国の立ち位置、信頼度などを知った。様々な人たちとのかかわりの中で、日本及び中国の両国に対する見方が変化した。
他国の人たちとの交流により、日本の国際的な立場が再認識できた。特に初対面では、「日本人です」というだけで相手には好印象を持たれることには驚いた。もちろん中国人の中にはいわゆる「反日」と呼ばれる人たちが一定数いるが、多くは日本のアニメや漫画などの文化や伝統が好きで、日本語を勉強し、日中関係が良好であってほしいと願う人たちが多かった。ある中国人タクシードライバーは「今と昔を区別して考え、今の時代日中はどのような関係を築くべきかを考えるのが重要だ。私は平和をいつでも望んでいる。」と述べており、留学前と後で中国人に対する見方が大きく変わったように感じている。
清華大学では「AIの積極的な活用」が教育方針として位置づけられていた。ChatGPTやdeepseek、Copilotなどの生成AIに限らずあらゆるAIを使うように教授陣から言われることもあった。課題では、もちろんAI禁止の課題もあったが、基本的にはAIの使用に積極的であった。その代わり、AIを使う前提で課題を出されるため、日本の大学では考えられないほどの大量の課題が課される。中国ではAIを一つの効率化ツールとして捉え、積極的に活用し、どのようにうまく運用するかを常に模索しているように私の目には映った。
語学力に関しては、履修した授業を通して「書き言葉」の語彙力や表現技法を学び、中国語の読解力及び作文力が大きく向上した。同時にリスニング力とスピーキング力も向上した。また、留学生同士では基本的に英語を用いるため、英語の4技能もすべて向上したと感じている。帰国後、今まで聞き取れなかった留学生の英語が驚くほど聞き取れるようになった。
今回の留学により、これからの進路において海外で仕事、生活するという選択肢が増えた。今後このまま自分の専攻である地震を研究する仕事を続けていく場合、海外でのキャリアも具体的な選択肢として視野に入れることができる。留学生活を通して、外国人と対話するハードルがとても低くなったと感じ、コミュニケーション能力が向上した。これからの時代、外国人とのコミュニケーション力はどの分野、どの企業においても必要になるスキルの一つだと考えている。
ネット社会が進む中、あらゆる情報が一瞬で手に入るようになった。そこに転がる情報が正しいかどうかは自分の目で確かめて初めて判断できる。事実、日本人の多くは中国と聞くとマイナスのイメージを持つ傾向にある。もちろん、文化や価値観、歴史観など多くの要因が重なった原因であることは承知の上だが、百聞は一見に如かず。中国に限らずあらゆる国や事物を自分の目で見ることは大事である。新しい環境に飛び込むのは勇気がいることだが、それと引き換えに得られるものはそれ以上の価値のあるものだ。留学を通して、案外どの国でも人間は生きていけるということは身をもって感じた。語学力以前にまず、留学しよう、新しい環境に飛び込もうという思いが留学生活を送るうえで最も大事なことだと考えている。
なお、準備しておけばよかったものとして現地の食生活や気候に適応するため、胃腸薬や保湿クリームなどの常備薬を持参することを推奨する。また、海外は日本と全く異なるため、日本基準で物事を捉えないようにしたほうがよい。