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令和6年度 奨学金受給者報告書

氏名 Cさん
学科・専攻、学年 地球惑星科学科 3年
留学先(国名) ワイカト大学(ニュージーランド)
留学期間 令和7年2月14日~令和7年3月16日

留学内容について

 九州大学の短期留学プログラムを利用して、1か月間の英語研修に参加しました。ワイカト大学はニュージーランド北島のハミルトンにある国立大学で、キャンパス内はニュージーランドの植物や生き物など、美しい自然であふれていました。大学では、オンラインでの事前テストの結果に基づいて振り分けられたクラスで英語の授業を受けたのですが、日本のように教科書を読む時間は少なく、与えられたテーマについてクラスメイトと議論する時間や、ペアを組んでインタビューした内容をクラス全体に発表する他己紹介など、どの授業でも英語を話す機会が非常に多かったです。難しい単語が出てきたときは、その意味を知っている生徒が別の表現で説明したり、先生から解説をいただいたりするなかで語彙力も伸ばすことができました。宿題にはホストファミリーへのインタビューや英作文などがあり、次回の授業でその内容を英語で発表するという形式が多かったです。

 留学中は2人暮らしのご夫婦のお宅でお世話になりました。ホームステイ先には他の大学から留学中の日本人学生がもう一人滞在しており、一緒に登校、おでかけなどをする中で仲良くなることができて嬉しかったです。帰宅後や週末は学校で学んだ表現を使ってホストファミリーと会話したり、買い物や観光に連れて行ってもらったりと毎日充実していました。地域の天文コミュニティが主催する天体観測会に参加し、南半球の美しい星空を眺めたことは特に印象に残っています。

 私はこれまで海外旅行にも行ったことがなかったので、海外での生活に不安を感じていたのですが、留学生の受け入れに対して経験豊富な大学のサポートチームや、優しいホストファミリーの助けを得て、毎日楽しく英語を学ぶことができました。ホームステイのプログラムは、初めて海外に行く人には特におすすめできると思いました。

サーファーに人気のRaglan。水平線を一望できる高台からたくさん写真を撮りました
Raglanの海

他国の人たちとの交流を通じてどのような変化がありましたか?

 ニュージーランドでは至る所でマオリ語を見かけます。例えば、私が留学したワイカト大学の看板やホームページには、“The University of Waikato”の下にマオリ語での大学名“Te Whare Wānanga o Waikato”と書かれています。また、大学に通うバスから見える道路の名前や地名も多くはマオリ語が起源になっており、通学当初はそれらの意味が全くわかりませんでした。ニュージーランドには世界中からの移住者がおり、さらに英語、マオリ語、手話の3つの言語を公用語として定めていることからもわかるように、国民の多くは異文化に寛容です。最初のうちは、自分は英語を勉強しに来たのだからマオリ語まで見る必要はないなどと考えていたのですが、授業でマオリの歴史や伝説について聞いたり、大学にあるたくさんのマオリ族の工芸品を見たりするうちに、せっかくこの国に来たならマオリについても知りたいと思うようになりました。そこで書店で見つけたマオリ語の辞典を購入し、地名が書かれた交通看板と照らしあわせていきました。ハミルトンの地名は地形や生き物の名前などがもとになっているものが多かったので、意味を知るごとにその土地のルーツが分かっていくのはとても面白かったです。単に異文化を否定しない、また受容するというだけでなく、他者の文化や言語を積極的に学びたいと思えるようになったことは、私にとって今回の留学で得た大きな財産の一つであると思います。

Caféで注文したドリンクとチーズスコーンを待つ間、敷地内で飼われている羊に餌をあげました
The Village Caféにて

留学によって変化が見られた事項について

 1か月間英語を使わざるを得ない環境に身を置いたことは、語学力の向上と精神の成長という面において大変効果的であったように思います。相手の話す内容が分からず困ったときに聞き返すという当たり前のことも、英語を使わなければならないと思うと最初は勇気が必要でしたが、少しずつ慣れていきました。自分から話すときは落ち着いて英文を組み立て、うまく伝えられなかったときは他の表現を試すということを繰り返すうちに、不安も減っていきました。留学当初は、例えばホームステイ先の家電の使い方や家庭内のルールなど、必要に迫られて英会話をするということが多かったのですが、生活に慣れるにしたがってその日の出来事や自分の考えについて積極的に伝えたいという気持ちが強まっていきました。伝えたいことが自分の語彙で説明できないときは、スマホなどで調べてから話すということもありましたが、このように調べた単語は単語帳を読んで覚えるよりずっと深く記憶に刻まれました。ある程度は英単語の知識がある状態で渡航するのがよいですが、留学先でも語彙力が伸びたと思います。毎日たくさんの失敗と成功を繰り返しながら、英語力と自信がともに向上していくことが感じられる留学期間でした。

様々なテーマの庭園が楽しめるHamilton Gardens。古代エジプトの庭に入ったときは、カラフルな壁画や装飾に囲まれて、まるでタイムスリップしたような気持ちになりました
Hamilton Gardens 古代エジプトの庭

今回の留学がこれからの進路にどのように活かされますか?

 将来は研究を仕事にしたいと考えています。日本で研究するにしても、日々世界中の論文に目を通す必要がありますし、国際的なプロジェクトや研究会に参加して海外の研究者と議論する機会もあるかもしれません。研究者として英語を使いこなすにはまだ練習が足りませんが、今回の留学は今後の語学力向上の足掛かりになると思います。またこの留学を通して、将来的には海外で研究するというのも素敵だなと感じました。

 留学中は、週に1、2回日本で所属する研究室のゼミにオンライン参加していました。ニュージーランドサマータイムで日本との時差はプラス4時間なので、日本でお昼から始まるゼミに語学学校の授業終わりに参加するという形です。スケージュールがタイトな日もありましたが、自分の研究や進路について考え始める大学3年の春休みに、他大学の学生や本職の研究者の発表を聞くことができたことは良い経験だったと思います。中には、日本以外の研究者から英語での発表を聞く機会もありました。そのゼミに参加したのは留学を始めて3週目で、耳も英語に慣れてきたころではありましたが、(ミーティングアプリには発表者スライドが表示されているので)話者の顔が見えない状態で、覚えていない(英語での)専門用語が盛り込まれた発表を理解することは、まだ難しく感じられました。リスニング力をさらに強化し、さらに研究に必要な英単語を覚えていくために、英語論文や専門書などで勉強する必要があると改めて実感しました。

 留学は自分の将来の選択肢を増やし、また自分が取り組むべき課題に気づくきっかけになったと思います。今後も研究のための勉強と並行して英語の学習を続け、身に着けた力をさらに伸ばしていきたいです。

気持ちのいいお天気の朝にワイカト川沿いを散歩しました。Waikatoはflowing water(流れる水)を意味します。ハミルトンシティには、同じくflowing waterを意味するWairere、lake of eels(うなぎの池)を意味するRototunaなど、マオリ語で水に関連する地名がたくさんあります。
朝散歩

留学を考えている学生に向けて留学して良かった事、準備しておけば良かった事等について

 まず、留学前にすべきことについてコメントします。渡航前は自分の英語力に自信がなかったのですが、学部3年の前期から夏休みにかけてTOEICの勉強をしていたおかげか、渡航後すぐのオリエンテーションやホストファミリーによる説明もある程度理解することが出来ました。具体的には3年生の6月初旬から勉強を始めて、7月末と10月末に試験を受けました。1限の授業がない日は朝9時に理系図書館に行き、図書館の対策本で勉強をするという習慣を続けることで、大幅にスコアを上げることが出来ました。渡航先で専門分野について学ぶ交換留学では、学術的な話題が設問の中心となるTOEFLなどの受験が必要となる場合が多いのですが、短期の語学留学では資格試験の受験を要求しないプログラムも多いと思います。TOEICの設問では主に日常会話での表現などが問われることに加え、九大の院試でも利用できる場合があるので、もし留学を検討しているなら早めにTOEICの勉強を始めることをお勧めします。

 次に、留学を通じて実感したことと留学中のアドバイスを記したいと思います。ある程度の文法知識と語彙力があれば、完璧でないとしてもwritingはできるようになります。しかし自分で英文が作れるようになったからといって、speakingもできるようになるわけではないということが今回の留学でわかりました。英作文なら、書きたい内容に対して複数の単語が思い浮かんだとき、ひとつひとつ試しながら最善の単語を選択することができますし、例えば三単現のsを書き忘れていることに気が付いたら後から付け足すことも可能です。一方英会話では、最も自然な表現を選択し続けることは難しく、また発した間違いをすべて訂正していくことは現実的ではありません。私の通った語学学校では、授業中生徒は積極的に発言するよう促されました。文法やコロケーションを間違えたときは先生がすぐに指摘して説明をくださったので、自分の間違いもクラスメイトの間違いも、すべてが学びの機会となっていました。特に自分の間違いに対する解説は印象に残るので、語学学校に通うなら勇気を出してたくさん発言することが効果的な学習になると思います。

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