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令和2年度 奨学金受給者報告書

氏名 Bさん
学科・専攻、学年 生物学科 4年(申請時)
留学先(国名) サンノゼ州立大学(アメリカ合衆国)
留学期間 令和3年1月27日 ~ 令和3年5月25日(期末試験終了日)

オンライン留学内容全体について

 2021 年 2 月から同年 5 月の期間でサンノゼ州立大学(アメリカ合衆国カルフォルニア州)の Virtual Exchange Program に参加した。当プログラムは、Covid-19 の世界的な感染拡大を受けて始まった新しい留学プログラムである。インターネットに接続してオンライン参加するものであり、現地へ渡航した訳ではなく日本で生活しながら参加した。当プログラムは九州大学の活動と並行して参加することが認められていた。

 プログラム中の活動としてはオンライン講義と留学生同士の交流イベントがあった。平日の午前中と休日にプログラムの活動を、平日の午後に研究室(卒業研究)、大学院の講義など九州大学の活動を行うことができるように日課を組んで参加した。

 まず、講義は日本時間で火曜日と木曜日に開講の Vertebrate Neurophysiology を履修した。8:00〜9:15(冬時間)/ 7:00〜8:15(夏時間)の時間帯で行われ、ZOOM 会議室を利用したライブ形式であった。ここでは脊椎動物の神経生理学を学んだ。普段の授業は宿題と授業の反復スタイルで進行し、宿題として基本事項を解説する動画を視聴し、授業では質問内容や応用問題などを扱っていた。単元の終わりには 4~5 人で 1 グループを組み、課題の章末問題に関しての意見交換や、薬物依存や脊椎損傷など授業内容を踏まえて考えることができる題材に関してグループディスカッションを行った。他にも、論文の要約課題(全3回)、定期試験(全3回)など沢山の課題が出題された。現地の学部生が30人程度受講していた。

授業風景:ディスカッション

 また、自由参加の留学生交流イベントにも参加した。このイベントはサンノゼ州立大学の留学課が不定期に企画したものであり、オンライン留学プログラムに参加している他の留学生と交流を深めた。ここでは、講義の情報交換、文化紹介、レクリエーションなどを行い、特に文化紹介では自分の名前の由来、好きな祝日(文化行事)、絶対に行くべき観光地など様々なトピックを共有することで盛り上がっていた。毎回、10 名程度が参加していた。

他国の人たちとの交流を通じてどのような変化がありましたか?

 プログラム中の交流を通じて積極的に発言するようになったと感じている。授業中のグループディスカッションでは、自分の考えを英語で論理立てて説明する必要があった。また、留学生同士の交流会では、殆ど共通理解がない状態から互いの文化や趣味など様々な話題で会話をした。このとき、他の学生たちはちょっとしたアイデアでも共有したり、簡単な質問やコメントから話題を広げたりしていた。このように、プログラムで交流した学生たちは少しでも言いたいことがあれば躊躇わずに発言していたが、グループの中で意見をする時はある程度まとまった内容で話すものであるという意識が私の中にはあったため、最初のうちは参加できなかった。しかし、このような環境に身を置くなかで次第に慣れることができ、プログラムが終わる頃には簡単な質問やアイデアの共有をすることに抵抗を感じなくなった。

オンライン留学によって変化が見られた事項(理学専門分野におけるアプローチや思考方法、語学力等)について

 オンライン留学によって「知識を応用して考える」、「議論を経て答えを出す」という 2 つのプロセスを意識するようになった。

 まず、学習においては「知識を応用して考える」ことが意識できるようになった。これは担当教員の指導スタイルに依るかもしれないが、私が受講した講義では模範解答が与えられていない応用問題が様々な箇所に取り入れられていた。例えば、宿題では「この範囲(解説動画)で扱った内容で試験問題を作成してください」という設問があり、論文の要約課題では「もしあなたがこの分野の研究者だったら、次はどのような実験を行いますか?」という設問があった。どちらの場合も事項の丸暗記では歯が立たず、教材を何度も見返したり他の文献を当たったりすることに繋がった。そして、解き終わる頃には頭の中で散らばってた雑多な知識に関連性を見出せるようになっていた。

 また「議論を経て答えを出す」というプロセスを面白いと考えるようになった。模範解答の与えられない応用問題に対して自ら考え出した答えは、授業で他の学生と議論する題材となった。ここでは、見落としていた事柄が補われたり、どのようにして間違っているのかフィードバックを貰ったりすることができ、満足のいく答えに近づいていったと感じている。

 この「知識を応用して考える」と「議論を経て答えを出す」から構成される一連のプロセスはこれまで経験したことがないものだったが、これを行うことによって自分の理解が深まると身をもって感じた。専攻分野に関してこのような経験ができたという点でも大きな収穫であり、今後の活動でも実践したいと考えている。

今回のオンライン留学がこれからの進路にどのように活かされますか?

 前項で述べた模範解答のない問題に対する取り組み方は、大学院における研究活動で活かすことができると考えている。今年の 4 月から九州大学の大学院に進学しており、学部生の頃よりも主体的に研究を進めていく必要がある環境に身を置いていると感じている。研究テーマはまさに模範解答のない問題そのものであるが、オンライン留学で練習したプロセスを意識しながら取り組んでいきたい。特に「議論を経て答えを出す」の部分はこれまでの取り組み方にはなかった要素であると考えている。そのため、授業で行ったようなディスカッションを意識しながら、友人や先輩なども巻き込むことによって研究に取り組んでいきたい。

 加えて、次に留学するチャンスがあれば最初から積極的にありたいと考えている。というのも、オンライン授業が始まったばかりの頃は、「用意してない…。」と発言を躊躇してしまい、議論や会話に参加できなかったからである。オンライン留学を終えた今では、あの時に躊躇っていた期間の分だけ、学びの機会を無駄にしていたと後悔している。今回の留学で鍛えた積極性を次に海外に行くチャンスでは存分に活かしたい。

後輩に向けてオンライン留学して良かった事、準備しておけば良かった事、アドバイス等について

 オンライン留学の利点は、海外の大学が提供する学習機会を、時間、生活費、渡航費用などの負担が少ない状態で利用できた点であると考えている。特に、当プログラムは九州大学の活動を行いながら参加することが認められていたため、学部4年生の卒業研究や大学院進学を控えていながらも留年や休学をすることなく進めることができた。

 しかし、私のオンライン留学計画は自分のキャパシティを超過していたと反省している。当初は、1 つでも多くの講義を履修したいという思いから週 5 日で講義がある留学プランを組んでおり、卒業研究と並行してやり遂げる気概に満ちていたが、次第に体力の限界を感じ、体調に影響が出てきそうであったため週 2 日の受講に減らしてしまった。これ以降は、卒業論文もひと段落してバランスよく学習を進めることができようになった。

 今、オンライン留学を検討している学生はきっとやる気に満ちているはずである。しかし、どの期間にどれくらいの活動ができるのかしっかりと把握して、無理ない留学計画を立てるように勧めたい。