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奈良岡 教授、岡崎 准教授らの研究グループによる小惑星探査機「はやぶさ2」初期分析の研究成果「炭素質小惑星(162173)リュウグウの試料中の可溶性有機分子」が科学誌「Science」に掲載されました。

  • 2023年2月27日(月)

ポイント

  • 小惑星リュウグウの表面から採取された試料を溶媒抽出することにより、メタノール抽出溶液をイオン化して超高分解能質量分析したところ、炭素 (C) と水素 (H)、 窒素 (N)、 酸素 (O)、 イオウ (S) を含む組成からなる有機分子が約 2 万種含まれていた。
  • クロマトグラフィーを用いて、アミノ酸やカルボン酸、アミンのほかに芳香族炭化水素類などが検出された。とくに、メチルアミンや酢酸のような揮発性の高い小さな有機分子が存在することは、リュウグウ表面ではこれらの分子が塩として安定して存在していることを示す。
  • 地球生命が用いるタンパク性アミノ酸 (アラニンなど) のほか、非タンパク性アミノ酸 (イソバリンなど) が見つかったが、左右構造を持つアミノ酸はほぼ 1:1 で存在し、非生物な合成プロセスを示す。
  • 炭化水素としてはアルキルベンゼンや多環芳香族炭化水素であるナフタレン、フェナントレン、ピレン、フルオランテンなどが主に存在した。これらの存在パターンは地球上の熱水原油のパターンと似ており、リュウグウ母天体上で水の影響を受けていたことが示唆される。
  • 試料表面をメタノールでスプレーしてその場分析すると、異なる有機分子が異なる空間分布で存在しており、リュウグウ母天体上で、流体と鉱物との相互作用の中で、有機化合物が移動・分離した可能性が示唆された。
  • 小惑星表面からはいろいろな過程で物質が宇宙空間に放出されることが観察されており、リュウグウ表面の有機分子が他の天体に運ばれる可能性がある。また、リュウグウなどの小惑星表面は炭素資源としても利用できることを示している。

概要

 「はやぶさ2」が持ち帰った小惑星リュウグウ試料を主に溶媒で抽出することにより、含まれる可溶性有機分子を分析した。リュウグウは小惑星帯で最も多い C 型小惑星に属する暗い始原的な小惑星で、炭素質コンドライト隕石のような含水鉱物に富んでいる。始原的な炭素質コンドライトにはアミノ酸を含む様々な可溶性有機分子が存在することが知られており、生命の誕生につながる前生物的有機分子を初期の地球や他の天体に供給した可能性がある。本研究では 1 回目のタッチダウンサンプリングで得られたリュウグウ表面試料に含まれる有機分子を日米欧の研究チームで分析を行った。その結果、アミノ酸やアミン、カルボン酸、芳香族炭化水素、含窒素環状化合物など種々の有機分子が検出された。これらの有機分子はリュウグウ表面から放出されて他の天体に運ばれる可能性もあるし、有機資源としても利用できるかもしれない。(https://www.science.org/doi/10.1126/science.abn9033)

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