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前多 准教授、別府 航早さん、Ziane Izri さんらの研究グループが遊泳微生物における新たなキラル集団運動現象を発見しました。

  • 2021年9月27日(月)

 水中を泳ぐ微生物や魚のように、自律的に動き、群れや渦といった秩序だった集団運動を示す物質群をアクティブマターといいます。このような集団運動を理解し、複雑な動きや流れを操ることは物質輸送の制御という観点からも重要な課題であります。アクティブマターの性質として、運動方向にわずかな偏りがあり、左向きになる頻度と右向きになる頻度が等しくならない「運動のキラリティー」があることが知られていました。しかし、この性質が巨大な集団運動の形成にどのような影響を与えるのかは十分に理解されていませんでした。

 九州大学 大学院理学研究院 前多 裕介 准教授、別府 航早 同博士課程学生、Ziane Izri 同学術研究員 (研究当時)、東京理科大学 理学部第一部 応用物理学科 住野 豊 准教授らの研究グループは、九州大学 大学院工学研究院 山西 陽子 教授、佐藤 匡 同博士課程学生 (研究当時) らと共に、遊泳微生物のバクテリアにおいて運動のキラリティーが誘起する新たな集団運動現象を発見しました。

 研究チームは独自のマイクロ流体デバイスを用いて、遊泳微生物のバクテリアを高密度に保ちながら円筒型マイクロウェル内に封入する技術を開発しました。すると集団運動は一方向 (上から見て反時計回り) に定まったキラルな渦運動となることを発見しました。これはマイクロウェルの壁近傍で安定した流れ (エッジカレント) が出現することに起因し、複数のキラル渦が入り乱れる状況においても、エッジカレントが渦同士の回転方向を揃えることを明らかにしました。これらの結果は、群れとなり巨大な流れを安定化するために運動のキラリティーが重要であることを示しています。本研究で明らかにした新たなキラル集団運動の理解をもとに、水中を泳ぐマイクロロボットによる複雑な流れの制御や、運動のキラリティーで物質輸送を制御するデバイス設計への応用が期待できます。

 本研究成果は、2021 年 9 月 24 日 (米国東部時間) に米国科学雑誌「Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America」で公開されました。

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