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石橋 准教授らの研究グループが海底熱水鉱床の初期形成プロセスに微生物活動が寄与していることを解明しました。

  • 2020年10月15日(木)

 国立研究開発法人 海洋研究開発機構 (理事長 松永 是) 海洋機能利用部門 海底資源センターの野崎達生グループリーダー代理と国立大学法人 九州大学 大学院理学研究院 石橋 純一郎 准教授らは、国立大学法人 神戸大学、学校法人 千葉工業大学、国立大学法人 東北大学と共同で、中部沖縄トラフの海底熱水鉱床から採取された試料を詳細に分析した結果、極めて低い硫黄同位体比組成 (δ34S) を持つ黄鉄鉱 (FeS2) 粒子を発見し、微生物活動に由来するものであることを明らかにしました。

 これまで、海底熱水鉱床を構成する硫化鉱物の沈殿や酸化・溶解に数多の微生物活動が関与しているであろうことは推測されていましたが、鉱床の形成プロセスと照らし合わせてその特定が試みられたことはありませんでした。そこで本研究では、地球深部探査船「ちきゅう」の航海で得られた掘削コアおよび熱水噴出孔のチムニー試料を対象として、詳細な顕微鏡観察や鉱物組成測定、局所硫黄同位体分析を実施しました。

 掘削コア試料に含まれる黄鉄鉱粒子は、熱水活動の重複によって鉱化作用が進む (鉱床が成長する) につれて、フランボイダル、コロフォーム、自形の組織・形状を示します。これらの黄鉄鉱粒子について、二次イオン質量分析装置 (SIMS) を用いた局所硫黄同位体分析を行った結果、フランボイダル黄鉄鉱は最低で –38.9‰ (パーミル:千分率) という極めて低い同位体比組成を有し、フランボイダル → コロフォーム → 自形と組織・形状が変わるにつれて、高い硫黄同位体比組成に漸移することがわかりました。

 このような大きな硫黄の同位体分別を起こし得るメカニズムは、硫酸還元バクテリアによる海水の硫酸還元プロセスしか知られていません。また、低い硫黄同位体比組成を持つフランボイダル黄鉄鉱は、鉱化作用が進むにつれて海底熱水鉱床を構成する黄銅鉱 (CuFeS2)、方鉛鉱 (PbS)、閃亜鉛鉱 (ZnS) などの他の硫化鉱物によってしばしば置換されています。したがって、フランボイダル黄鉄鉱は海底熱水鉱床を構成する硫化鉱物の出発物質・核として機能しており、鉄や硫黄などの材料を供給していると考えられます。この初期出発物質であるフランボイダル黄鉄鉱は、微生物による硫酸還元プロセスを経た硫黄を材料としていることから、海底熱水鉱床の初期形成プロセスには海底下の微生物活動が重要な役割をしており、鉱床生成を誘発・促進していると考えられます。

 今後、他の海域の掘削コア試料や33S・36Sも含めたマルチ硫黄同位体分析を行い、海底熱水鉱床生成と微生物活動寄与の詳細を解明していく予定です。

 本成果は、米国のThe Geological Society of America (GSA) が発行する学術雑誌「Geology」に10月7日付けで掲載されました。(https://doi.org/10.1130/G47943.1)

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