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岩見准教授らがヒト T 細胞白血病ウイルス1型 (HTLV-1) の新しい感染維持機構を解明しました。

  • 2018年1月24日(水)

 京都大学ウイルス・再生医科学研究所の安永純一朗講師、熊本大学大学院生命科学研究部の松岡雅雄教授 (京都大学ウイルス・再生医科学研究所、客員教授兼任)、九州大学大学院理学研究院の岩見真吾准教授らの研究グループは、ヒト T 細胞白血病ウイルス 1 型 (human T-cell leukemia virus type 1: HTLV-1) が極めて巧妙な手口により感染を維持していることを明らかにしました。

 HTLV-1 は主に CD4 陽性 T リンパ球に感染し、感染細胞ががん化すると治療抵抗性の悪性腫瘍である成人 T 細胞白血病 (adult T-cell leukemia: ATL) を引き起こします。HTLV-1 は発がん作用を有する Tax というウイルスタンパク質の遺伝子を持っていますが、Tax は免疫の標的になりやすいため白血病細胞では殆ど検出されず、その役割や作用機構は明らかになっていませんでした。今回の研究により、白血病細胞のごく一部の細胞が短時間 Tax を作動させることで、細胞集団全体の生存を維持していることが判明しました。さらに感染細胞にストレスが加わると Tax を産生する細胞が増えることも明らかとなりました。免疫から逃れるため Tax の産生を最小限に抑える一方で、状況に応じて Tax を活性化する機構は HTLV-1 の持続感染に重要であり、感染細胞のがん化にも関与していると考えられます。これはウイルス遺伝子がオン・オフを調節しながら機能していることを明らかにした初めての研究です。これらの所見は ATL 発症機序の解明に繋がるだけでなく、Tax を標的とした効果的な免疫療法の開発に寄与できるものです。

 本研究は国立研究開発法人日本医療研究開発機構「次世代がん医療創生研究事業 (P-CREATE)、新興・再興感染症に対する革新的医薬品等開発推進研究事業」、独立行政法人日本学術振興会、国立研究開発法人科学技術振興機構、文部科学省、公益財団法人高松宮妃癌研究基金、公益財団法人安田記念医学財団から研究資金の助成を受け行われました。研究成果は、2017年12月20日 (水) に米国科学アカデミー紀要「Proceedings of the National Academy of Science of the United States of America」に発表されました。(https://doi.org/10.1073/pnas.1715724115)

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