地球の内部ではさまざまな運動が起こっています。たとえば、外核内の流れによって地球の磁場が出来ています。マントルの流れは、プレート運動や地震などの現象と関連しています。火山の噴火や火山に伴う温泉は、私たちも目にすることのできる流れです。地球惑星科学の授業を受けたことのない方も、こういった現象についてテレビや新聞等を通してある程度知っていると思います。しかし、実際どのような流れが地球(あるいは惑星)の内部で生じているかとか、それがどのように観察される地学現象に関係しているかなど、私たちが理解していないことがたくさんあります。
当研究分野では、地球内部のさまざまなダイナミカルな現象を理解するために、以下のような研究を行っています。
コアは直接見ることができませんが、磁場の変化や地震波の伝わり方を通じて、中で起こっていることを間接的に推測することができます。
(a)地球の外核では地球磁場が作られています。このメカニズムは、近年の数値シミュレーションの発達によってだいぶん解明されてきましたが、結果の解釈は依然として難しいという状況です。その解釈に寄与するような基礎過程の研究をしています(図1)。
(b)外核の一番外側には成層が安定な層がある可能性があります。もしそのようなものがあれば、観測される磁場にはその影響が大きく出てくるはずです。そこで、そのような成層内部のダイナミクスの基礎過程として、波動伝播の性質を調べています(図2)。
(c)外核の流れはマントル対流の影響を受けています。そのことによって磁場のパターンとマントル対流のパターンを比較することによって推測できます。おそらく、マントル下部の熱境界条件の不均質が外核の中に流れを引き起こしているのだろうと考えられています。その基礎過程を研究しています。
(d)内核の内部の地震波の伝わり方が方向によって異なることから内核の中にも流れがあるのではないかと考えられるようになっています。私たちは、それが外核の対流によって引き起こされていると考えています。そのメカニズムを研究しています(図3)。
火山噴火や熱水循環(温泉水の流れ)は、地下のダイナミズムを直接感じさせてくれる現象です。流れが相変化や化学変化の影響を大きく受けています。
(a)爆発的噴火において、噴火が断続的に起こるメカニズムを理論的に研究しています。泡とマグマの相対運動が重要な役割を果たしていることがわかってきました。
(b)海底火山の近くには温泉が湧いています。この水を熱水、その水の流れを熱水循環と呼びます。熱水は、元をたどると海水なのですが、流れてくる途中で石と反応したり、海水が薄い塩水と濃い塩水に相分離したりすることによって、いろいろな組成の熱水が出来ます。それから、場所によっては地下に熱水だまりがあることも確認されています。そこで、硬石膏の沈殿物により熱水だまりができるようすの数値シミュレーションをしました(図4)。
地球科学と直接関係はないのですが、表面張力が巨視的な運動を引き起こす興味深い現象を発見しました。