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石原教授らの研究グループが記憶を「選んで」忘れさせるしくみを発見しました。

  • 2026年11月4日(水)

ポイント

  • 脳が、たくさんの記憶の中からどの記憶を選んで忘れさせているのか、そのしくみは全く分かっていませんでした。
  • 本研究では、特定の記憶を「選んで」忘れさせる分子とそれが働く神経回路とタイミングを同定しました。
  • 本研究の成果は、忘却のしくみの理解を進め、将来的には忘却の異常が関わる疾患の研究にもつながる可能性があります。

概要

 覚えておきたいことは忘れてしまうのに、忘れたいことはいつまでも覚えていたりします。このようなことは、誰しも経験があるかと思います。私たちの脳は、記憶を区別せずに忘れさせているのでしょうか、それとも、「選んで」忘れさせているのでしょうか。もし「選んで」いるのであれば、膨大な記憶の中から「この記憶は残して、この記憶は忘れる」というしくみがあると考えられます。しかし、そのメカニズムについては、全く分かっていませんでした。九州大学大学院システム生命科学府の大西湧己大学院生、大学院理学研究院の石原健教授らのグループは、線虫C. elegansをモデルとして、特定の記憶を「選んで」忘れさせる分子を同定し、それが働く神経回路やタイミングを決定しました。

 私たちは線虫におけるエサと匂いの学習をモデルとして、忘却の研究を進めています。これまで、私たちの研究グループは、記憶を保持している神経細胞に、別の神経細胞からの「忘れることを促進するシグナル」が働くことで、記憶を忘れていることを見つけていました。しかし、そのシグナルの正体や、どのような神経回路で働くのかは分かっていませんでした。私たちの研究グループは、この「忘れることを促進するシグナル」を担う分子を同定し、それが働く神経回路を明らかにしました。また、この神経回路が学習後の特定の時期に働いていることも分かりました。さらに、2種類の匂いを同時に学習した線虫において、そのしくみは一方の匂いの記憶だけを「選んで」忘れさせていることも明らかになりました。

 この「忘れることを促進するシグナル」を受け取る受容体には、ヒトにも類似した分子が存在し、脳の記憶に関わる領域で働いていることが知られています。今回の発見は、忘却のしくみの理解を進め、将来的には忘却の異常が関わる疾患の研究にもつながる可能性があります。

 本研究成果は米国の科学雑誌「 Current Biology」に2026年11月3日(火)午前1時(日本時間)に掲載されました。(https://doi.org/10.1016/j.cub.2026.10.015)

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