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松島教授らの研究グループが高速原子間力顕微鏡を用いて乳癌治療薬フルベストラントの新たな作用をリアルタイムに直接可視化することに成功しました。

  • 2026年9月30日(水)

ポイント

  • 乳癌治療薬フルベストラント (選択的エストロゲン受容体分解薬、SERD)が結合した全長エストロゲン受容体α (以下、ERα)の1分子動態を、高速原子間力顕微鏡 (高速AFM)を用いてリアルタイムに直接可視化することに成功。
  • 色々な薬剤を試験した中で、フルベストラント結合時のERαだけが、見かけの分子体積が有意に小さくなり、観察面上での動きが速くなることを発見。
  • フルベストラント結合時に特徴的な、伸び縮みを繰り返す「ひも状」構造を観察。天然変性領域の露出・可動化が示唆され、フルベストラントが「受容体を分解へ導く薬」であるだけでなく「受容体分子の状態と動きそのものを変える薬」であることを提唱。

概要

 九州大学大学院理学研究院の松島綾美教授らの研究グループは、金沢大学ナノ生命科学研究所 (WPI-NanoLSI)/新学術創成研究機構のリチャード・ウォング教授らとの共同研究により、乳癌治療薬フルベストラントが結合したエストロゲン受容体α (以下、ERα)分子の「かたち」と「動き」を、高速原子間力顕微鏡(以下、高速AFM)でリアルタイムに可視化することに成功しました。

 ERαは、女性ホルモンであるエストロゲンを受け取って遺伝子の転写を制御する核内受容体で、乳癌の進展に中心的な役割を果たします。乳癌治療薬フルベストラントは、ERαの働きを止めるだけでなく受容体そのものを分解へ導く「選択的エストロゲン受容体分解薬 (SERD)」ですが、その効果は、一般的なタンパク質分解機構では説明できず、薬が結合した全長ERαが分子としてどのような形と動きをとるのかは不明でした。

 本研究では、薬剤の存在なし、17β-エストラジオール (E2)結合、フルベストラント結合、4-ヒドロキシタモキシフェン (4-OHT)結合の4条件を同一条件下で高速AFM観察しました。その結果、フルベストラント結合時のERαだけが、見かけの分子体積が有意に小さく、観察面上を有意に速く動き、伸び縮みする「ひも状」の柔軟な突起を頻繁に示すことを見出しました。

 本成果は、フルベストラントが受容体を分解へ導くために、その状態と動きそのものを変える薬であることを示し、次世代の乳癌治療薬開発に新たな指針を与えると期待されます。

 本研究成果は米国化学会の学術雑誌「The Journal of Physical Chemistry Letters」に2026年9月4日(金) (日本時間)に掲載されました。(https://doi.org/10.1021/acs.jpclett.6c01784)

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