外部電場(電圧)の向きに応じて、電気的な偏り(分極)の方向を反転・保持できる強誘電体は、各種センサーや不揮発性メモリ、エネルギーハーベスティングなど、様々な分野で活躍が期待される極めて重要な機能性材料です。しかし、従来の強誘電体の設計は「空間反転対称性の破れ」に基づいており、結晶学的な厳しいルールに縛られていました。
今回、九州大学大学院理学研究院の大谷亮准教授、大学院理学府の時雨新氏 (博士後期課程)、柳澤純一氏 (2023年3月博士課程卒業)、大学院理学研究院のLe Ouay Benjamin (ルウェ バンジャマン)助教、大場正昭教授らは、東京理科大学の並木智哉氏、小林文也講師、田所誠教授、九州大学大学院総合理工学研究院の辻雄太教授、九州大学中央分析センターの荻原直希准教授らと共同で、空間反転対称性の破れていないプロトン伝導体 Na2MnN(CN)4×3.25H2O を開発し、電圧を印加することで極めて巨大かつ反転可能な分極特性を発現することを見いだしました。この強誘電体とも類似した「強誘電イオン伝導体」の分極現象は、電場により伝導したプロトンが結晶内で偏るイオンバイアス状態が生じることで発現しており、電場を取り除いた後も保持されることを明らかにしました。その分極値は、結晶の[010]方向において、室温・相対湿度80%・周波数0.01 Hzの条件下で、438 mC/cm2 と超巨大であり、代表的な酸化物強誘電体であるチタン酸バリウム(BaTiO3, 26 µC/cm2)の約17,000倍に達しました。
本成果は、「極性結晶構造に依存する」という従来の強誘電体設計の制限を打破し、非極性結晶であってもイオン伝導と協同的なイオン変位を巧みに組み合わせることで、超巨大な極性機能を創出できることを実証したものです。すなわち、「すべてのイオン伝導体が分極機能を示しうる」可能性を示唆しています。
本研究成果は、2026年9月18日(金)正午 (日本時間)にアメリカ化学会 (ACS)の国際学術誌「Journal of the American Chemical Society」にオンライン掲載されました (DOI:10.1021/jacs.6c12413)。
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