世界の主要な家畜であるニワトリには、名古屋種など多くの地域特有の品種が存在し、それらの遺伝資源を保存することは極めて重要です。しかし、哺乳類とは異なり、鳥類は多量の卵黄と卵殻を持つため受精卵を凍結保存しておくことは困難です。そのため、体外培養した生殖幹細胞である始原生殖細胞(PGC)を凍結保存しておき、必要に応じて他個体の胚に移植して次世代を再生する手法が代替案として期待されています。しかしながら、一部の品種や雌の胚からはPGCを安定的に培養して株化することが難しいという課題がありました。
そこで、名古屋大学大学院生命農学研究科の奥嵜 雄也 助教、西島 謙一 教授らの研究グループは、九州大学大学院理学研究院の齋藤 大介 教授および、国立遺伝学研究所分子生命史研究室の川口 茜 助教との共同研究により、多様なニワトリ品種におけるPGCの遺伝子発現を網羅的に解析しました。その結果、PGCの胚における正常な発生と体外での培養環境への適応のために、ゲノム中のレトロウイルス由来の遺伝子「ENS-1/ERNI」およびその制御配列である「Soprano LTR」が重要な役割を果たしている可能性を明らかにしました 。
本成果は、鳥類の生殖細胞発生における未知の分子メカニズムを解明しただけでなく、絶滅危惧鳥類や貴重なニワトリ品種の遺伝資源バックアップ技術の効率化へ貢献することが期待されます。
本研究の成果は、2026年7月17日に国際学術誌「iScience」に掲載されます(オンライン2026年6月24日先行公開済み)。(https://doi.org/10.1016/j.isci.2026.116434)
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