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荒川准教授が同位体によるラマンスペクトル変化の起源を体系的に解明しました。

  • 2026年4月23日(木)

ポイント

  • フォルステライト(Mg2SiO4)の酸素同位体効果を理論計算で体系的に解明
  • ラマンスペクトルのピーク位置、分裂、広がりを生む物理機構を明らかに
  • 隕石・惑星物質の非破壊同位体分析の実現に期待

概要

 酸素同位体比は、地球環境や生命活動、さらには太陽系形成過程を解明するための重要な指標です。しかしながら、微小な鉱物粒子に対し、試料を破壊せずに同位体情報を取得することは難しく、新たな分析手法の確立が求められています。

 九州大学 大学院理学研究院の荒川 雅 准教授は、かんらん石の一種であるフォルステライト(Mg2SiO4)において、含まれる酸素同位体(16O, 17O, 18O)比の違いがラマンスペクトルに与える影響を、第一原理計により体系的に解明しました。

 これまで、同位体に応じて振動数が変化することは知られていましたが、部分的な同位体置換によってラマンスペクトルのピーク位置、分裂、広がりを生む物理機構を明らかにがどのように変化するのかについては、定量的かつ統一的な理解が十分ではありませんでした。

 本研究では、周期境界条件に基づく密度汎関数理論(DFT)計算を用いて、広い同位体組成範囲にわたるラマンスペクトルを再現し、スペクトル変化の起源を詳細に解析しました。その結果、

  • 質量効果によるピークの低波数シフト
  • 対称性低下によるラマン不活性モードの活性化
  • 置換サイト依存性によるピーク分裂
  • 多様な配置の平均化によるスペクトルの広がり

という複数の要因が組み合わさり、スペクトルが変化することが明らかになりました。

 さらに、既報の実験スペクトルとの比較により、主要なSi–O伸縮振動(約820、880、920 cm−1)の同位体依存性を定量的に再現することに成功しました。

 酸素同位体がラマンスペクトルのピーク位置、分裂、広がりをどう変えるのか、その物理的起源を第一原理計算で初めて体系的に示した本研究成果は、マイクロラマン分光による高空間分解能同位体分析の理論基盤を提供するものであり、隕石中のプレソーラー粒子や地球深部物質の非破壊同位体分析への応用が期待されます。

 本研究成果は米国の雑誌「The Journal of Physical Chemistry C」に2026年4月22日(水)(日本時間)に掲載されました。(https://pubs.acs.org/doi/10.1021/acs.jpcc.5c08487)

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