高等研究院(大学院理学研究院 物理学部門 素粒子理論研究室所属)の楠亀 裕哉 准教授が、日本学術振興会賞を受賞しました。
「日本学術振興会賞」は、我が国の学術研究の水準を世界のトップレベルにおいて発展させるために、創造性に富み優れた研究能力を有する若手研究者を早い段階から顕彰しその研究意欲を高め研究の発展を支援していく目的で、平成16年度に創設されたものです。
楠亀 裕哉 (高等研究院 准教授)
※大学院理学研究院 物理学部門 素粒子理論研究室所属
量子重力・量子多体系の境界領域における新手法の開発と応用
楠亀裕哉氏は、量子重力と量子多体系という異なる理論物理分野の境界領域において、新しい理論的手法を開発し、多くの独創的成果を挙げている。博士課程在籍時に2次元共形場理論の共形ブートストラップを解析的に解く独創的手法を単独で開発し、以後この手法は世界中の研究に広く応用されている。その後も量子重力、量子情報、量子多体系の境界領域で数々の重要な成果を上げ、ブラックホール合体過程の解析法の確立や、量子もつれエントロピー解析によるトポロジカル相の理解など、多分野に波及する発見を導いた。さらに、ホログラフィー原理を用いてエネルギーと情報の透過率の新しい不等式を導出するなど、素粒子物理と物性物理を橋渡しする独創的研究を展開している。理論物理学に新たな枠組みを切り開く先駆的研究者であり、教育面でも後進育成と国際的研究交流に尽力している。将来の更なる飛躍が強く期待される極めて有望な若手研究者である。