巨大地震が発生する南海トラフの沈み込み帯では、通常の地震のほかに、スロー地震とよばれる、通常の地震よりもゆっくりとした断層すべり現象が起こっています。スロー地震は、巨大地震との関連も示唆されている現象で、その活動の実態や発生メカニズムを明らかにすることは重要です。スロー地震は、離れたところで発生した大地震による応力変化の影響を受けて活発化することが知られており、このような誘発現象の知見は、スロー地震の発生メカニズムを考えるうえで鍵となる示唆を与えます。
南海トラフに面した室戸岬の沖合では、海底ケーブルによる分布型音響センシング(DAS)による連続観測を行なっています。DASは、光ファイバーケーブルに沿った歪の変化を計測するもので、数m〜数十mおきという密な観測が可能であることから、新しい地震観測方法として注目されています。
九州大学大学院理学研究院の馬場慧助教、海洋研究開発機構の荒木英一郎グループリーダーと堀高峰センター長の研究グループは、2024年1月1日16時10分に発生した能登半島地震後の、室戸岬沖のDAS観測のデータを注視していたところ、本震の約3時間後から、小規模なスロー地震活動が起こっていることがわかりました。これらのスロー地震は、南海トラフのスロー地震発生域の西端で起こっており、能登半島地震による応力変化によって引き起こされたものと考えています。能登半島地震の影響を受けて、海底地震計の一部は十分な観測ができていなかったため、この活動はDASの連続観測を行なっていなければ検出できなかった可能性があります。この研究はDASの連続観測を続けていたからこそ行えたもので、大地震後の地震・スロー地震活動をモニタリングするためにDAS観測は有効であることが分かります。
本研究成果は、米国の雑誌「Geophysical Research Letters」に2025年11月25日に掲載されました。(https://doi.org/10.1029/2025GL118973)
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