台風の強度や発生数が温暖化に伴いどのように変化するのかについては多くの研究がありますが、台風による極端降水の地域別の将来予測はほとんどありませんでした。特に日本を含む東アジアにおける台風災害リスクの将来予測は喫緊の課題です。本研究で、九州大学大学院理学府博士後期課程3年の呉 継煒大学院生、同大学院理学研究院の川村隆一教授らの研究グループは、過去に発生した台風の再現実験と温暖化シナリオSSP245に基づく疑似温暖化実験との比較解析を行いました。また地域別の台風による極端降水の将来変化を正確に把握するために、コア降水と遠隔降水を分離・同定する客観的手法を適用しました。解析結果から、東アジア全体では今世紀末には台風降水は約126%も増加し、特に遠隔降水の増加率が顕著でした。地域別でみると、朝鮮半島南部では減少する一方、中国南部と日本では増加し、特に日本では210%もの増加となっており、台風の経路変化に伴う台風コア降水の増加が主要因であることなどを明らかにしました。
これらの知見は、将来気候下の台風災害のリスクを考えるにあたって、地域特性を評価すると同時に、台風コア降水と遠隔降水を適切に評価する必要性を強く示唆しています。また本研究で用いた領域気象モデルによる台風の再現実験や疑似温暖化実験の精度向上によって、対象とする台風のサンプル数を大幅に増やすことで、将来予測の不確実性を更に低減していくことに繋がります。
本研究成果は、2025年11月23日(日)に国際学術誌「International Journal of Climatology」にオンライン掲載 (早期公開)されました。また本研究はJSPS科研費補助金(JP24H00369)の助成を受けました。(https://doi.org/10.1002/joc.70201)
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