植物は土壌中の窒素濃度に応じて根の構造を大きく変化させます。窒素が豊富な環境では「窒素が十分に存在する」と判断し、不要なエネルギー消費を避けるために根の生長を抑制することが知られていましたが、その詳細なメカニズムはこれまで不明でした。
このたび、九州大学大学院理学研究院の楠見健介 講師、伊藤和洋 大学院生(研究当時)、園田智也 大学院生らの研究グループは、神戸大学大学院理学研究科の深城英弘 教授、九州工業大学大学院情報工学研究院の花田耕介 教授、中部大学応用生物学部の鈴木孝征 教授、熊本大学大学院先端科学研究部の檜垣匠 教授らの研究グループとの共同研究により、モデル植物のシロイヌナズナを用いて、高窒素環境で根の生長抑制に働くペプチドLOHN1と、LOHN1が関わるこれまで未解明の高窒素情報シグナル伝達のしくみを明らかにしました。
LOHN1遺伝子の発現を改変した植物を解析した結果、植物が高窒素環境に置かれると窒素代謝が促進され、その結果アミノ酸の一種であるグルタミン酸が地上部から篩管を通じて根の先端部へと運ばれ、そこでLOHN1遺伝子の発現を誘導することが分かりました。さらに、発現したLOHN1ペプチドは篩管細胞から根の表層に移動し、側根の密度を抑制制御することが明らかになりました。
本研究で得られた知見は、他の多くの植物種にも応用可能であり、作物の窒素利用効率の向上や、施肥に対応して根の生長を人為的に制御することが可能になることが期待されます。
本研究成果は、2025年10月25日午前0時(日本時間)に、米国の科学誌「Current Biology」オンライン速報版に掲載されました。(https://doi.org/10.1016/j.cub.2025.09.060)
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