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川村教授らの研究グループが盛夏期に出現するモンスーンジャイアの実体を解明しました。

  • 2025年10月15日(水)

ポイント

  • 総観スケール(数日のスケール)でみられるモンスーンジャイア(モンスーン渦)は主として熱帯低気圧(台風)の外側循環(水平規模~2500km)によって形成されている。
  • 新しい台風の外側循環に交替することでモンスーンジャイアは持続し、水蒸気コンベアベルトがその外側循環の交替に大きく寄与している。
  • 10日平均や月平均場では、モンスーンジャイアは積雲対流加熱に対するロスビー波応答の性格が強まる。このように多重時間スケールの構造がモンスーンジャイアの本質である。

論文情報

 盛夏期(特に8月)の日本の南方海上に出現する巨大な反時計回りの渦はモンスーンジャイア(モンスーン渦)と呼ばれ、アジアモンスーン活動や台風の発生との関連などこれまで多くの研究がなされてきましたが、モンスーンジャイア自体の形成要因については混沌としていました。

 本研究で、九州大学大学院理学研究院の川村隆一教授、理学府修士課程2年の丸野航輔大学院生(研究当時)、同課程2年の吉田尚起大学院生(研究当時)、藤原圭太技術専門官(高松地方気象台)の研究グループは、高解像度数値シミュレーションと大気再解析データを併用して、モンスーンジャイアの二つの側面(総観スケールと月平均のスケール)に注目することで、モンスーンジャイアの発生・持続メカニズムの全容を明らかにしました。解析結果から、(1)総観スケールでは、水平規模が2500kmに及ぶ台風の外側循環(outer circulation)がモンスーンジャイアの主要な形成要因であること、(2)複数の台風による外側循環の交替が水蒸気コンベアベルトの発達を介して繰り返され、交替が繰り返されることでモンスーンジャイアは持続すること、(3)長周期の時間スケールではモンスーンジャイアは積雲対流加熱に対するロスビー波応答の特徴が顕在化することを明らかにしました。これらの知見は、時として日本に甚大な豪雨災害をもたらす台風の遠隔降雨の発生メカニズムの解明とその予測、台風の発生環境場の形成要因と台風の発生予測などに大きく貢献するものです。また、豪雨災害ハザード(危険度)予測の観点のみならず、モンスーンジャイアと台風活動の近未来予測も益々重要な課題になると考えられます。

 本研究成果は、2025年9月27日(土)に国際学術誌「Atmospheric Research」にオンライン掲載(早期公開)されました。また本研究はJSPS科研費補助金(JP24H00369)の助成を受けました。(https://doi.org/10.1016/j.atmosres.2025.108517)

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