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川井准教授らの研究グループが細胞を破裂させて低・中分子薬の「入りやすさ」と「出やすさ」を評価することに成功しました。

  • 2025年10月2日(木)

ポイント

  • 薬を作る上で、病気の細胞の内部へどの程度薬が取り込まれて保持されるか評価が必要
  • 浸透圧を利用して細胞を破裂させ、迅速に細胞内部(細胞質)の薬剤を回収
  • 特徴の異なる4種類の薬剤の浸透性と排出性を明確に解析することに成功

概要

 次世代医薬品として注目されている「中分子薬」は、がんや難病の治療などに大きな可能性を秘めています。これらの薬は低分子薬と同じように体内で「細胞」の中に入り、特定のターゲットと結びついて効果を発揮します。しかし、薬が細胞にどの程度入り、どの程度の時間とどまるのかを測定するには、これまで時間も手間もかかる複雑な方法しか存在しませんでした。また、薬剤の治療対象である病気の細胞を使って検証することもできませんでした。

 九州大学大学院理学研究院の川井隆之准教授らの研究グループは今回、水の力(浸透圧) で細胞を一瞬で破裂させ、中の成分をすばやく取り出すという新しい方法「CyTOR(サイトル)」を開発しました。この方法では簡単な操作だけでわずか5秒以内に細胞の中にある薬を取り出すことができ、液体クロマトグラフィー質量分析(LC-MS)という精密な分析装置で正確に測定できます。

 この方法を使い、4種類の薬(うち1つは中分子薬)を細胞に与えたあと、どのように細胞に取り込まれ、どのくらいの速度で排出されるかを詳しく調べました。その結果、薬ごとに異なる「入りやすさ(浸透性)」や「出やすさ(排出性)」があることが明らかになり、これまでの研究結果とも一致しました。

 この技術は、創薬(新しい薬をつくる)研究を効率的に進めるための新たな細胞膜透過性試験法として位置付けられます。将来的には、薬の候補物質を効率よく選び出すための標準的な方法として、広く医薬品開発の現場で活用されることが期待されます。

 本研究成果は、米国化学会の国際科学誌「Analytical Chemistry」に2025年10月2日(木)午前8時(日本時間)に掲載されました。また本研究はAMED創薬基盤研究推進事業等の助成を受けたものです。(https://doi.org/10.1021/acs.analchem.5c01064)

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