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大谷准教授らの研究グループが空間反転対称性の破れた二次元MOFを合成し、巨大分極を示す強誘電イオン伝導体として機能することを発見しました。

  • 2025年6月30日(月)

ポイント

  • 設計が極めて難しい空間反転対称性の破れた二次元MOFを合成し、新しい強誘電イオン伝導体として機能することを見いだした。
  • 従来の強誘電体の約1000倍の分極値を達成した。
  • 水蒸気に応答した第二次高調波発生(SHG)の変換を達成した。

研究内容と成果

 今回、九州大学大学院理学研究院の大谷亮准教授、宋衍慶氏(2024年9月修士課程卒業)、時雨新氏、村上優介氏、平松光太郎教授、Le Ouay Benjamin(ルウェ バンジャマン)助教、大場正昭教授らは、九州大学大学院総合理工学研究院の辻雄太准教授、近畿大学理工学部の杉本邦久教授、株式会社リガクの菊池貴氏と共同で、空間反転対称性の破れた二次元MOF、[Mn(salen)]2[ReN(CN)4(MeCN)]×H2O を開発し、室温で20 mC/cm2(mCはミリクーロン、0.005 Hz)の巨大な分極値をもつ「強誘電プロトン伝導体」であることを発見しました。

 燃料電池分野などで研究開発が進むイオン伝導体(固体電解質)ですが、一般的にはイオン伝導と強誘電特性は両立しないと考えられてきました。しかしながら、本材料はこの常識を覆し、二次元MOFの分極反転と結晶内のイオンの移動現象が同期することで、強誘電特性を顕著に増強した機能性を示しました。その結果、従来の強誘電体の約1000倍の分極値を達成しました。

 また、[Mn(salen)]2[ReN(CN)4(MeCN)]×H2Oは波打ち二次元構造をもち、面内方向のひずみが一方向にそろう(空間反転対称性が破れる)ことで極性が発現していました。この空間反転対称性の破れはプロトン伝導の媒体となっている水分子が誘起しており、第二次高調波発生(SHG)を水蒸気により変換可能な二次元MOFであることも明らかにしました。強誘電プロトン伝導体は、従来の極性材料とは一線を画す機能性をもつ固体材料として現在大きく着目されています。

本研究成果は、2025年6月26日(木)午後5時(日本時間)にイギリス王立化学会(RSC)の国際学術誌「Chemical Science」にオンライン掲載されました。(https://doi.org/10.1039/d4sc08700c)

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