大学院システム生命科学府 一貫制博士課程3年の宮田太成さん、坂本怜飛さんが「第28回DNA複製・組換え・修復ワークショップ」において学生優秀ポスター賞を受賞しました。この賞は、2025年5月28日から30日にかけて熱海市で開催された第28回DNA複製・組換え・修復ワークショップにおいて、優秀なポスター発表を行った学生4名に与えられました。
宮田 太成 (大学院システム生命科学府 一貫制博士課程3年)
MutSαとWRNによるヘテロ二重鎖引き剥がし反応の分子メカニズムの解析
抗組換え反応は、DNA二重鎖切断の修復経路である相同性依存的修復の正確性を向上させる極めて重要な反応である。しかしながら、抗組換え反応の詳細な分子メカニズムは未だ明らかになっていない。本研究において、精製タンパク質を用いた試験管内再構成により抗組換え反応の分子メカニズムを解析したところ、ミスマッチセンサーMutSαはWRNヘリカーゼの活性を促進することを見出した。一方で類似配列間組換え中間体上では、むしろ中間体の解消を阻害した。これらの知見は、抗組換え反応におけるタンパク質の基質依存的な制御機構の解明に裨益するものである。
坂本 怜飛 (大学院システム生命科学府 一貫制博士課程3年)
O6-メチルグアニンがDNA複製とミスマッチ修復依存的にDNA損傷を引き起こすメカニズム
DNAミスマッチ修復(MMR)はDNA複製の誤りを修正して、複製の正確性を高める重要な反応である。さらにMMRは、塩基損傷の一種であるO6-メチルグアニン(O6mG)に応答すると、DNA複製を妨げて細胞死を引き起こす。本研究では、この細胞死の分子機構を明らかにするため、ツメガエル卵抽出液を用いて、O6mGが引き起こすDNA損傷応答を解析した。興味深いことに、O6mGを鋳型にDNA複製が起こると、MMR依存的に一本鎖損傷が残り続けた。さらに、この一本鎖損傷に複製フォークが達すると、DNA二重鎖切断が生じることが明らかとなった。これらの知見は、O6mGを誘導する塩基アルキル化抗がん剤の作用機序の理解に貢献する。