大学院理学府物理学専攻修士課程2年の廣谷知也さんが「第51回量子情報技術研究会」において学生発表賞を受賞しました。この賞は、量子情報技術研究会において、学生による優秀な発表を表彰するものです。学生発表賞の受賞者は、次回開催されるの量子情報技術研究会の受賞式で表彰される予定です。
廣谷 知也 (受彰当時:大学院理学府 物理学専攻 修士課程2年)
qutritを用いた相対論的量子オットー熱機関
ブラックホールの熱力学で知られるように、熱力学と相対論は密接に関わっていることが知られている。この関係性はこれまで様々な観点から研究されているが、本研究では、相対論的量子オットー熱機関に対する新たなアプローチとして、作動物質として三準位量子系(qutrit)を用いる研究を行った。従来、qubitを用いたモデルでは仕事抽出が困難であった特定の条件下において、qutritの採用により有意な仕事の取り出しが可能であることを理論的に明らかにした。研究の過程では、qutrit系におけるエネルギー変換メカニズムの詳細な解析を進め、従来のqubit系との相違点として、qutrit利用時に新たに非対角項の影響が現れることが分かった。これにより、従来用いられてきたAlickiによるスタンダードな仕事と熱の定義は特殊な状況下でしか成り立たず、一般的ではない可能性があることが示唆された。本研究は、多準位系を用いた相対論的量子情報理論の理解を深化させるとともに、量子系におけるエネルギー変換の可能性を広げる意義ある結果となった。