令和 6 年 (2024 年) 9 月 21 日午前を中心に能登半島北部で記録的な豪雨が発生し、同時多発的な斜面崩壊や土石流・泥流による甚大な災害が引き起こされました。秋雨前線の降水帯が対馬海峡から能登半島へ延び、半島北部では 48 時間積算のレーダー解析雨量の最大値が 512 mm に達していました。
本研究で、九州大学 大学院理学研究院の川野 哲也 助教と川村 隆一 教授の研究グループは、高解像度数値シミュレーションと大気再解析データを併用して、能登半島奥能登地域に記録的豪雨をもたらした降水システム (線状降水帯を含む) を再現し、その発生・持続メカニズムの全容を解明しました。解析結果から、①本豪雨は台風 14 号 (Pulasan) がもたらした遠隔降雨であり、台風近傍から能登半島へ 1,600 kg m-1 s-1 に達するほどの強い水蒸気の流入が生じていたこと、②水蒸気流入の直下に位置する日本海南部の海水温は平年に比べて +4.5 ℃ を超える異常高温 (海洋熱波) となっており、海洋熱波が台風の遠隔降雨を増幅させていたこと、③本豪雨の期間降水量の最大値で 38 %、領域平均値で 27 % が海洋熱波によるものと見積もられることを明らかにしました。
これらの知見は、日本周辺海域で海洋熱波が発生していると台風の遠隔降雨が増幅され、沿岸地域で豪雨が発生する危険度が急速に高まることを強く示唆しており、豪雨災害ハザード (危険度) 予測の観点から、台風活動の予測だけではなく、海洋熱波の予測も益々重要な課題になると考えられます。
本研究成果は、2025 年 3 月 23 日 (日) に国際学術誌「Scientific Online Letters on the Atmosphere」にオンライン掲載 (早期公開) されました (https://doi.org/10.2151/sola.2025-021)。また本研究は JSPS 科研費補助金(JP22K03720, JP24H00369)の助成を受けました。
※ 本件についての詳細およびお問い合わせ先は以下をご覧ください。