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熱田 勇士 講師、服部 優菜さん、齋藤 大介 教授らの研究グループが、肢芽組織の蛍光レポーターニワトリ系統を世界に先駆けて樹立しました。

  • 2025年1月16日(木)

    ポイント

    • ニワトリ始原生殖細胞、組織特異的プロモーター、トランスポゾン法などを組み合わせて活用することで、肢芽の四肢前駆細胞 (LPC) と外胚葉性頂堤 (AER) が特異的に蛍光標識されたニワトリ系統を作出することに成功した。
    • 今後この系統をモデルとして研究を行うことで、LPC あるいは AER の形成および維持機構に関する研究が一層進むことが期待される。

    概要

     脊椎動物の手足 (四肢) の元となるのは、胚発生期に出現する肢芽と呼ばれる組織です。肢芽は主に四肢前駆細胞 (Limb Progenitor Cell、以下「LPC」) と肢芽表皮から構成されます (参考図 A)。肢芽表皮の中で、肢芽先端の領域は外胚葉性頂堤と呼ばれ (Apical Ectodermal Ridge、以下「AER」; 参考図 A)、FGF や Wnt などの分泌因子を LPC へと与えることで LPC の増殖を促進し、肢芽を成長させる働きを担います。これまでニワトリ胚肢芽は四肢研究の実験モデルとして長らく用いられてきましたが、LPC および AER を胚内で特異的に標識することが困難であったため、それら LPC や AER 細胞の分化状態を生体内でモニターすることや、LPC、AER のみを分取し遺伝子発現解析を行うことが不可能でした。

     九州大学 大学院理学研究院の熱田 勇士 講師らの研究グループは、LPC あるいは AER でのみ活性を示す組織特異的プロモーター (それぞれ Prrx1 プロモーター、Msx2 プロモーター) を活用し、LPC が緑色蛍光タンパク質 (ZsGreen) で、AER を赤色蛍光タンパク質 (DsRed) でラベルされたトランスジェニック (TG) ニワトリ系統を作出することに成功しました (参考図 B)。まず、生殖細胞の元となる始原生殖細胞をニワトリ胚より採取し、Prrx1 promoter-ZsGreen 配列と Msx2 promoter-DsRed 配列を、Tol2 トランスポゾン法と呼ばれる手法により始原生殖細胞ゲノムへと挿入しました。組換えられた始原生殖細胞を別のニワトリ胚の生殖巣へと移植し、それらホスト胚を成鳥まで飼育した後さらにかけ合わせることで、下図に示したようなレポーター胚が得られました。

     本研究は、理学研究院 齋藤 大介 教授、株式会社セツロテック 陳 奕臣 (チェン・イーチェン) 研究員、徳島大学 先端酵素学研究所 竹本 龍也 教授らとの共同研究として実施され、研究成果は国際学術誌「Developmental Biology」に 2025 年 1 月 8 日 (水) にオンライン掲載されました (https://doi.org/10.1016/j.ydbio.2025.01.003)。

    参考図
    LPC/AER ダブルレポーターニワトリ胚の作出
    LPC/AER ダブルレポーターニワトリ胚の作出
    (A) ニワトリ 3 日胚肢芽の模式図。 (B) TG レポーターニワトリ 4 日胚の明視野画像と蛍光写真。

    謝辞

     本研究は創発的研究支援事業 (JST、JPMJFR214G)、科研費基盤研究 (C)、内藤記念科学振興財団、加藤記念バイオサイエンス振興財団の支援を受け行われたものです。

    論文情報

    掲載誌:Developmental Biology
    タイトル:Generation of a transgenic chicken line with reporters for limb bud mesenchyme and apical ectodermal ridge cells
    著者名:Yuji Atsuta#, Yi-Chen Chen, Yuna Hattori, Tatsuya Takemoto, Daisuke Saito
    DOI:10.1016/j.ydbio.2025.01.003

    お問合せ先

    <研究に関すること>
    九州大学大学院理学研究院・生物科学部門・動物発生学研究室 
    講師 熱田 勇士 (アツタ ユウジ)
    TEL:092-802-6556 FAX:092-802-4270
    Mail:atsuta.yuji.360◎m.kyushu-u.ac.jp
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