マヨネーズや泡沫などは、柔らかい球状粒子が乱雑に充填された物質であり、ソフトジャム固体と呼ばれます。ソフトジャム固体は、液体と固体の中間の性質である粘弾性を示しますが、その理解は十分ではありませんでした。特に、異常粘性損失と呼ばれる、遅い変形に対して粘性が急激に増大する現象について、理解が困難でした。
今回、東京大学 大学院総合文化研究科の原 雄介 大学院生 (研究当時) と池田 昌司 准教授は、九州大学 大学院理学研究院の水野 大介 教授らと共同で、ソフトジャム固体の粘弾性を理解することに成功しました。典型例として、マヨネーズのような高密度エマルジョンに注目し、粘弾性の微視的理論の構築と、マイクロレオロジー実験による粘弾性測定を行ったところ、理論と実験が定量的に一致することを見出しました。
またこの理論により、ソフトジャム固体の異常粘性損失が、ガラスの異常振動と関係していることがわかりました。ガラスは、ボゾンピーク振動と呼ばれる、空間的に乱れた低周波振動を、普遍的に持つことが知られています。今回の研究で、ソフトジャム固体の異常粘性損失は、ボゾンピーク振動と同様の特性を持ち、同様の法則に従うことがわかりました。
この発見は、ソフトジャム固体の粘弾性を解明するだけでなく、ソフトジャム固体とガラスの隠れた関係を暴くものであり、多様なアモルファス固体の物性の統一的理解を大きく推進する成果と言えます。本研究成果は、日本時間 1 月 10 日 19 時 (米国東部時間:10日午前 5 時) に「Nature Physics」誌に掲載されました (https://doi.org/10.1038/s41567-024-02722-7)。
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