剛直な平面構造を有する多環芳香族炭化水素は、グラフェンをナノサイズに切り出した構造を有することからナノグラフェンとも呼ばれます。ナノグラフェンの構造と物性の相関を解明する研究が有機合成化学者により盛んに行われており、その中でヘテロ元素を組み込んだドープ型ナノグラフェンも多数報告されています。しかしそのほとんどは、有機溶媒中で凝集により溶けなくなってしまうことを避けるため、周囲にかさ高い置換基や長鎖アルキル基などを付与して溶解性を高める設計がなされています。
京都大学 大学院工学研究科 分子工学専攻 田中 隆行 准教授、関 修平 同教授、中川 蒼 同博士課程学生、松尾 悠佑 同博士課程学生 (研究当時)、佐藤 徹 同教授 (兼:福井謙一記念研究センター教授)、大田 航 同特定助教らは、九州大学 大学院理学研究院 化学部門 恩田 健 教授、宮田 潔志 同准教授、江原 巧 同博士課程学生との共同研究により、ヘテロ[8]サーキュレンと呼ばれるヘテロ元素ドープナノグラフェンにおいて、置換基をもたない化合物の合成と同定、その固体状態での分子間相互作用と光物性の解明をおこない、この分子の特異な発光挙動を明らかにしました。
本研究成果は、2024 年 11 月 6 日に英国の国際学術誌「Chemical Communications」にオンライン掲載されました (https://doi.org/10.1039/D4CC05539J)。
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