神経細胞は、電気的な信号を流すことによって情報を伝達しています。これまで、電極を使った電気的信号の測定によって神経活動が解析されてきましたが、近年では緑色蛍光タンパク質 (GFP) などを改良したカルシウムイオン感受性蛍光タンパク質 (カルシウムイオンプローブGECI) を使ったカルシウムイメージング法が発達し、生きたままの個体で非侵襲に神経細胞の活動を測定できるようになりました。
このカルシウムイメージング法では、細胞内カルシウムイオン濃度の変化を測定しますが、これは電気的な信号の本体である膜電位の変化に起因します。したがって、細胞内カルシウムイオン濃度の変化が膜電位の情報をどのように反映しているかを理解することが、カルシウムイメージングによる神経活動の理解に必要です。
九州大学 大学院理学研究院の石原 健 教授と九州工業大学 大学院情報工学研究院の徳永 旭将 准教授らは、膜電位感受性蛍光タンパク質 (膜電位プローブGEVI) とカルシウムイオン感受性蛍光タンパク質を同時にイメージングすることによって、線虫が生きたそのままの状態で膜電位とカルシウムイオンの同時測定に成功しました。線虫の嗅覚神経細胞 AWA において、この方法を用いて匂い物質に対する応答を測定し、膜電位変化と細胞内カルシウムイオン変化が異なる情報をコードしていることを世界で初めて明らかにしました。
この発見は、膜電位変化と細胞内カルシウムイオン変化の関係を生きたままの個体で初めて明らかにしたものであり、今後は高等動物の神経細胞における測定などへの応用が期待されています。
本研究は、Communications Biology 誌に 2024 年 9 月 16 日 (月) (日本時間) に掲載されました (https://doi.org/10.1038/s42003-024-06778-2)。
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