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楠亀 裕哉 准教授らの研究グループが、エネルギー透過には情報が必要なことを発見しました。

  • 2024年9月17日(火)

    発表のポイント

    • 2 つの物質を接合させると、その間に「境界面」が生まれる。この境界面をエネルギーや情報がどの程度透過するのかを理解するのは重要な課題であるが、実際にこの透過率を計算するのは困難である。
    • エネルギーと情報量の間に、(エネルギー透過率) ≤ (情報量透過率) という驚くほどシンプルな関係が成り立つ事を発見した。
    • シンプルゆえに汎用性の高い不等式であるため、今後の境界面の研究に幅広く応用されていくと期待している。

    概要

     異なる場の量子論をつなぐ境界面は、素粒子論や物性理論の様々な問題に登場する重要な概念です。境界面があると、エネルギーや情報量の透過率などが問題になりますが、これらを実際に計算するのは難しい問題でした。

     九州大学 高等研究院の楠亀 裕哉 准教授 (理化学研究所 数理創造プログラム客員研究員)、カリフォルニア工科大学 教授を兼ねる東京大学 国際高等研究所 カブリ数物連携宇宙研究機構の大栗 博司 教授、テキサス大学の Andreas Karch 教授、Hao-Yu Sun 研究員、Mianqi Wang 大学院生らの研究グループは、2 次元の共形場の量子論について、エネルギー透過率、情報量透過率、そして場の量子論のヒルベルト空間の大きさの指標 (正確には、高エネルギーでの状態数の増加率) の 3 つの量の間に、(エネルギー透過率) ≤ (情報量透過率) ≤ (ヒルベルト空間の大きさの指標) という明解な不等式が成り立つことを示しました。この不等式は、「エネルギーを通すためには、情報を通す必要があり、そのいずれもが十分な状態数を必要とする」ということを表しています。また、この論文では、これより強い不等式はあり得ないことも示しました。

     エネルギー透過率と情報量透過率は、いずれも重要ながら計算することが困難な量であり、またその間に関係があることは知られていませんでした。本論文は、これらの量の間の不等式を示すことで、この重要であるが困難な問題に新しい光を当てました。

     本研究成果は米国の雑誌「Physics Review Letters」のオンライン版に、2024 年 8 月 30 日 (金) に掲載されました (https://doi.org/10.1103/PhysRevLett.133.091604)。

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