異なる場の量子論をつなぐ境界面は、素粒子論や物性理論の様々な問題に登場する重要な概念です。境界面があると、エネルギーや情報量の透過率などが問題になりますが、これらを実際に計算するのは難しい問題でした。
九州大学 高等研究院の楠亀 裕哉 准教授 (理化学研究所 数理創造プログラム客員研究員)、カリフォルニア工科大学 教授を兼ねる東京大学 国際高等研究所 カブリ数物連携宇宙研究機構の大栗 博司 教授、テキサス大学の Andreas Karch 教授、Hao-Yu Sun 研究員、Mianqi Wang 大学院生らの研究グループは、2 次元の共形場の量子論について、エネルギー透過率、情報量透過率、そして場の量子論のヒルベルト空間の大きさの指標 (正確には、高エネルギーでの状態数の増加率) の 3 つの量の間に、(エネルギー透過率) ≤ (情報量透過率) ≤ (ヒルベルト空間の大きさの指標) という明解な不等式が成り立つことを示しました。この不等式は、「エネルギーを通すためには、情報を通す必要があり、そのいずれもが十分な状態数を必要とする」ということを表しています。また、この論文では、これより強い不等式はあり得ないことも示しました。
エネルギー透過率と情報量透過率は、いずれも重要ながら計算することが困難な量であり、またその間に関係があることは知られていませんでした。本論文は、これらの量の間の不等式を示すことで、この重要であるが困難な問題に新しい光を当てました。
本研究成果は米国の雑誌「Physics Review Letters」のオンライン版に、2024 年 8 月 30 日 (金) に掲載されました (https://doi.org/10.1103/PhysRevLett.133.091604)。
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