害虫の薬剤抵抗性の発達、環境に与える負荷、有機栽培や減農薬作物のニーズの高まりなどから、化学農薬のみに頼らない新たな害虫防除技術の確立が急務となっています。そこで九州大学 大学院理学研究院、国立研究開発法人 森林研究・整備機構森林総合研究所、宮城県農業・園芸総合研究所、東北特殊鋼株式会社、電気通信大学 大学院情報理工学研究科、琉球大学 農学部、国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構 (農研機構) の研究チームは、昆虫が振動や音に対する感覚を用いたコミュニケーションを繁殖や社会性維持などに利用していることに着目し、人為的な刺激として振動を伝えることで害虫の制御が可能であることを明らかにしてきました。具体的にはトマト、きのこなどを対象に、振動を用いて世界的な害虫として知られるコナジラミ類やキノコバエ類の密度制御が可能であること、加えて対象作物の増収効果が認められることを明らかにしています。総説では、これらの研究成果について説明するとともに、振動に関する科学的知見を総合防除 (IPM) へ生かすための展望についても言及しました。
現在研究チームは、国が策定した「みどりの食料システム戦略」の実現に向け、オープンイノベーション研究・実用化推進事業において、振動を活用した物理的防除技術の農業生産現場導入を目指した研究に取り組んでおります。今後、振動農業技術の実証と改良を続けて、2025 年度以降にトマト栽培用の振動発生装置「トマタブル®」の市販化を進める予定です。
本研究成果はオランダの学術雑誌「Entomologia Experimentalis et Applicata」に 2024 年 5 月 10 日 (金) (日本時間) にオンライン掲載されました (https://doi.org/10.1111/eea.13458)。
※ 本件についての詳細およびお問い合わせ先は以下をご覧ください。