数年程度の気候変動予測は、気候変動に対する施策決定の基盤となる予測情報を提供します。大気海洋結合モデルを用いた気候変動予測では、膨大な数値計算 (数値シミュレーション) からグローバルな気候変動の予測情報が得られます。一方、同様の手法で極端な気象現象に伴う局所的な降水量の変動の予測情報を直接的に得ようとした場合には、より高い空間解像度をもつ大気海洋結合モデルを用いた多数のアンサンブル計算が必要であり、計算量の著しい増加を伴うことから現時点では実施が困難です。
九州大学 大学院理学研究院の望月 崇 准教授は、計算量の著しい増加を伴う直接的な予測計算に代えて、大気海洋結合モデルによる気候変動予測データセットと高い空間解像度をもつ大気モデルによる過去再現アンサンブル計算データセットを併用して、極端な気象現象に伴う局所的な降水量の予測情報を得ることに成功しました。とりわけ 1961 年以降の西日本地方に対する検証では、日別降水量においてひと冬あたり上位 1 % にあたる極端な降水量の数年ごとの多寡が、大気海洋結合モデルで精度良く予測可能なグローバル気候変動成分である “海盆間変動” (Trans-Basin Variability) の動向に強く追随することがわかり、3 年先までの起こりうる極端な降水量の多寡に潜在的な予測可能性が実証されました。
本研究成果は、将来の気候変動予測、とりわけ異常天候や極端な気象現象の強度について中長期的な予測の実現に繋がることが期待されます。
本研究成果は、米国地球物理学連合 (American Geophysical Union) の国際科学誌「Geophysical Research Letters」に 2024 年 6 月 1 日 (土) (日本時間) に掲載されました (https://doi.org/10.1029/2024GL108312)。
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