電場で分極⽅向をスイッチすることのできる強誘電体は種々のセンサーやメモリなどに⽤いられる実⽤材料であり、分極値の向上は機能性向上のための根幹をなす重要なテーマです。そのため無機から有機物質まで幅広く物質探索が⾏われてきましたが、そのすべては絶縁体でした。これは、電場に応答してイオンや電⼦が流れる伝導体では、分極を反転させることができず強誘電特性が発現しないと考えられていたためです。
今回、九州⼤学 ⼤学院理学研究院の博⼠課程の柳澤 純⼀ ⽒ (2023年学位取得)、Benjamin Le Ouay 助教、⼤⾕ 亮 准教授、⼤場 正昭 教授らは、東北⼤学 ⼤学院理学研究科の⻘⼭ 拓也 助教、東京⼯業⼤学 理学院の藤井 孝太郎 助教・⼋島 正和 教授、学習院⼤学⼤学院 ⾃然科学研究科の稲熊 宜之 教授、ファインセラミックスセンターの桑原 彰秀 博⼠・設楽 ⼀希 博⼠、熊本⼤学⼤学院 先端科学研究部の速⽔ 真也 教授と共同で、空間反転対称性の破れた新規シアノ⾦属錯体 K2MnN(CN)4·H2O を開発し、室温で 1.3×10-5 S/cm 程度のプロトン伝導体であると同時に 15 mC/cm2 の巨⼤な分極値をもつ強誘電体であることを発⾒しました。この「強誘電イオン伝導体」の機能は空間反転対称性の破れとプロトン伝導が強く相関したプロトン整流特性に基づいており、伝導したプロトンが⾻格の分極値を⼤幅に増幅していることを明らかにしました。
本研究成果は、2024 年 1 ⽉ 2 ⽇ (⽕) に アメリカ化学会 (ACS) の国際学術誌「Journal of the American Chemical Society」にオンライン掲載されました (https://doi.org/10.1021/jacs.3c10841)。
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