グラフェンに代表される⼆次元層状物質は、⾼伝導性、柔軟性、透明性など様々な魅⼒的な性質を有しているため、多彩なアプリケーションが提案されており、とくに、次世代エレクトロニクスの新材料として⼤きな注⽬を集めています。近年、強磁性を⽰す⼆次元物質も発⾒され、⼆次元磁⽯という名のもと、磁気記録やスピントロニクスへの応⽤も期待されています。しかしながら、室温でも磁⽯の特性を維持する⼆次元物質は極めて少なく、その磁気的特性も⼗分明らかになっていませんでした。
本研究では、最近、室温⼆次元磁⽯の性質を持つことが明らかになった Fe3GaTe2 の熱電特性を詳細に評価し、この⼆次元磁⽯が優れた横型熱電特性を有することを世界で初めて明らかにしました。
九州⼤学 ⼤学院理学府 修⼠2年 劉 書含、理学研究院 崔 暁敏 博⼠、同 胡 少杰 博⼠、同 ⽊村 崇 教授らの研究グループは、絶縁基板上に転写された Fe3GaTe2 薄膜に複数の微細電極を取り付け、磁場中での磁気輸送特性、及び熱電特性を精密に評価しました。その結果、Fe3GaTe2 薄膜の磁⽯の向きが無磁場下で⼆次元平⾯に垂直⽅向に揃っていることを⽰し、更に、この物質に温度勾配を加えると、特殊な熱電効果とスピン軌道相互作⽤により、磁⽯の向きと温度勾配の両⽅に垂直な⽅向に⼤きな起電⼒が発⽣することを明らかにしました。
本成果は、⼆次元磁⽯の熱電変換材料としての⼤きな応⽤可能性を⽰した結果であり、熱エネルギーを有効な電気エネルギーに容易に変換できる技術のため、⼆次元物質の優れた柔軟性も考慮することで、様々な環境下での応⽤が期待できます。
本成果は、2023 年 12 ⽉ 31 ⽇ (現地時間) にドイツの科学誌 Advanced Materials のオンライン版に掲載されました (https://doi.org/10.1002/adma.202309776)。
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