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宮⽥ 准教授、恩⽥ 教授、笠 僚宏さん、⻄郷 将⽣さんらの研究グループが、五重項状態の室温量⼦コヒーレンスの観測に成功しました。

  • 2024年1月10日(水)

    ポイント

    • 有機分⼦を⽤いてより多くの電⼦からなる量⼦ビットを作ることは将来の量⼦技術に向けて重要であるが、4 つの電⼦スピンを持つ五重項状態の量⼦コヒーレンスを室温で達成した例はなかった。
    • 分⼦性材料の五重項状態の量⼦コヒーレンスを室温で観測することに初めて成功し、⾦属錯体⾻格 (MOF) 中で⾊素部位の運動性を抑制することがその実現の鍵であることを明らかにした。
    • 超⾼感度な量⼦センシングを実現する上で重要な基盤的知⾒が得られた。

    概要

     ⼀重項分裂は、光照射により⽣成された 1 分⼦の励起⼀重項状態が近傍の分⼦とエネルギーを共有し、2 つの励起三重項状態を⽣成する現象です。この過程で⽣じる五重項状態と呼ばれる特殊な量⼦状態は、量⼦コンピューティングをはじめとする量⼦技術の最⼩単位である量⼦ビットに利⽤できることから近年研究が進んでいます。しかし、量⼦ビットとして利⽤するにあたり必要とされる、五重項状態の量⼦コヒーレンスを室温で観測した例はありませんでした。

     今回、九州⼤学 ⼤学院⼯学研究院の⼭内 朗⽣ ⼤学院⽣、⽥中 健太郎 ⼤学院⽣ (当時)、楊井 伸浩 准教授、同⼤学 ⼤学院理学研究院の宮⽥ 潔志 准教授、神⼾⼤学 分⼦フォトサイエンス研究センターの婦⽊ 正明 特命助⼿、⼩堀 康博 教授らの研究グループは、九州⼤学 ⼤学院⼯学研究院の君塚 信夫 教授、同⼤学 ⼤学院理学研究院の恩⽥ 健 教授、神⼾⼤学 ⼈間発達環境学研究科の佐藤 春実 教授らと共同して、室温における五重項状態の量⼦コヒーレンス観測に初めて成功しました。

     量⼦コヒーレンスの観測は量⼦センシングへの応⽤上⾮常に重要です。本研究では MOF 中に⾊素を⾼密度に集積化することにより、五重項状態を発⽣させ、かつ室温下でもその量⼦コヒーレンスを 100 ns (ナノ秒) 以上維持できることを⾒出しました。今回の成果により、複数の電⼦スピンから成る量⼦ビットを室温で⽣成するための要件が明らかとなり、今後の MOF の多孔性を活かした超⾼感度な量⼦センシングの実現が期待されます。

     本研究成果は、2024 年 1 ⽉ 4 ⽇ (⽊) 4 時 (⽇本時間) にアメリカ科学振興協会の国際学術誌「Science Advances」にオンライン掲載されました (https://doi.org/10.1126/sciadv.adi3147)。

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