HOME > 広報 > トピックス > 2023年7月21日(金)

岩政 公平さんと野下 助教が、葉脈の多様性と規則性を「かたち」の数理解析により発⾒しました。

  • 2023年7月21日(金)

    ポイント

    • 植物個体内の⽔や光合成産物の輸送に重要な役割を果たす葉脈の「かたち」の多様性と規則性を明らかにすることは植物科学の重要課題の⼀つ。
    • 葉脈を輸送ネットワークとして定量化するための⼿法を新たに開発。これにより葉脈の多様性と規則性をデータに基づき特定。
    • 今後の網状のネットワーク構造を対象とした多様な分野での解析基盤となることが期待。

    概要

     植物の葉脈は⽔や光合成産物の輸送に関わるネットワーク状の構造です。この葉脈の「かたち」は、透⽔性や蒸散効率、⾷害などの損傷に対する耐性 (ロバスト性) など様々な機能的な要請により規則的でありながらも多様なパターンを⽰します。しかし、これまでの研究では、⻑さ、直径、分岐⾓度などの単純な計測値に基づく評価がほとんどでした。そのため葉脈を輸送ネットワークとして捉え定量的に評価するためのフェノタイピング (表現型計測) ⼿法が求められています。

     本研究では、画像解析と深層学習、形態測定を組み合わせることで階層的で複雑な葉脈の「かたち」を特徴づける簡便かつ⾼効率なフェノタイピング⼿法を開発し (参考図) 、葉脈の「かたち」の多様性と規則性を定量的なデータ解析により発⾒しました。

     九州⼤学 ⼤学院システム⽣命科学府 ⼀貫制博⼠課程 2 年の岩政 公平⽒、理学研究院の野下 浩司 助教らの研究グループは、5 種 479 枚の葉標本と国⽴科学博物館葉脈標本データベースに含まれる 5 属 328 枚の染⾊標本を対象に、開発したフェノタイピング⼿法を⽤いた定量的な評価により、葉脈の「かたち」のデータが 1 次元的な分布を⽰し、その分布に沿ってツリー状からループ状へと遷移するという多様性と規則性を特定することに成功しました。また、この分布パターンは先⾏研究で理論的に予測された輸送効率、形成効率、損傷に対するロバスト性のいずれかを改善しようと葉脈の「かたち」を変化させると、それ以外のいずれかもしくは両⽅が低下するパレート最適に対応する可能性が⾼いことを⾒出しました。

     本研究のアプローチは、発⽣⽣物学や医療画像解析はもちろん、バイオミメティクス、ジェネラティブデザイン、マイクロ流体⼯学など、ユビキタスな網状のネットワーク構造を対象とした様々な分野で同様の解析のための基盤となることが期待されます。例えば、特定の⼈⼯物に求められる機能要請からトレードオフに基づいて最適なデザインが提案できるなどが考えられます。

     本研究成果は⽶国の雑誌「PLOS Computational Biology」に 2023 年 7 ⽉ 21 ⽇ (⾦) 午前 4 時 (⽇本時間) に掲載されました (https://doi.org/10.1371/journal.pcbi.1010581)。

    ※ 本件についての詳細およびお問い合わせ先は以下をご覧ください。

    関連先リンク