HOME > 広報 > トピックス > 2023年4月12日(水)

宇都宮 准教授、笛⽥ 和希さん、⼩宮 樹さん、蓑毛 健太さんらの研究グループが、福島第⼀原発近くの⼩学校内に⾼濃度放射性セシウム含有微粒⼦が⼤量に残留していることを発見しました。

  • 2023年4月12日(水)

    ポイント

    • 福島の旧避難区域への帰還のためには、安全性に関する情報、特に建物内部におけるセシウムの分布と存在状態に関する情報をできる限り⽰す必要がある。
    • 原発に最も近い、現在閉鎖されている⼩学校の内部には⾼濃度放射性セシウム含有微粒⼦が最⼤で 1 平⽶あたり 2400 個以上残留していることを発⾒。
    • 今後、建物内部における⾼濃度放射性セシウム含有微粒⼦の分布を把握、理解した上でより安⼼できる帰還につながることを期待。

    概要

     事故後 12 年経過し、除染等により環境中の放射能は⼤幅に低減してきたことから、帰還困難区域の⼀部解除が施⾏されてきています。現在残っている環境中の放射能は主に半減期が約 30 年のセシウム 137 によるもので、私たちの周辺や屋内においてその存在状態、分布を正しく知ることは、帰還をより安全なものにするために⽋かせません。⼀⽅で通常は環境中に低い濃度で存在しているこの放射性セシウムが⾼濃度に濃集する直径数ミクロンの⾼濃度放射性セシウム含有微粒⼦ (CsMP) がメルトダウンの時に⼤量に形成して、原発から環境中に放出されたことが分かってきました。PM2.5 と同じで⾒えないほど⼩さく、局所的に⾼い放射能を放つことからその分布が懸念されていますが、特に屋内に流⼊した粒⼦や沈積した粒⼦の数は分かっておらず、その定量的計測法の開発と建物内部での存在量や分布の解明が望まれていました。

     九州⼤学 ⼤学院理学研究院の宇都宮 聡 准教授および理学府 修⼠課程の笛⽥ 和希 ⽒ (研究当時) と⼩宮 樹 ⽒ (研究当時) らの研究グループは、スタンフォード⼤学、ナント⼤学、ヘルシンキ⼤学、東⼯⼤、筑波⼤、国⽴極地研と共同で、福島第⼀原発から南⻄⽅向に約 2.8 km 離れた、事故後閉鎖されている⼩学校の建物内部を 2016 年に初めて調査して、独⾃で開発した⼿法を⽤いて廊下に残留する粉塵に含まれる⾼濃度放射性セシウム含有微粒⼦を定量することに成功しました。その結果、⾼濃度放射性セシウム含有微粒⼦が 1 平⽶から集められた粉塵中に 2,400 個以上含まれる場所、粉塵全体の放射能のうち約 39 % がその微粒⼦由来の場所が存在しました。⼀⽅で、建物の外では微粒⼦由来の放射能が全体の 1.5 % 程度であることから、今回の結果は、事故時に放出されたセシウムの中に短い期間ですが多量の⾼放射性セシウム含有微粒⼦が含まれ、それらが建物の開閉状態によっては建物内部に流⼊して粉塵として残されることを⽰唆しています。今後は同様の⼿法を⽤いながら、帰還困難区域の建物内部にこの粒⼦がどの程度流⼊して、残留しているかを把握し、安⼼できる帰還につなげることが期待されます。

     本研究結果は、2023 年 4 ⽉ 8 ⽇に Chemosphere 誌に掲載されました。(https://doi.org/10.1016/j.chemosphere.2023.138566)

    ※ 本件についての詳細およびお問い合わせ先は以下をご覧ください。

    関連先リンク