HOME > 広報 > トピックス > 2023年3月15日(水)

重富 尚太さんと西脇 瑞紀さんが、非定常核形成速度の時間発展を簡単に推定できる方法を発見しました。

  • 2023年3月15日(水)

ポイント

  • 楕円テータ函数の豊かな数学的性質を利用することで、非定常核形成速度に関する複数の非自明な関係式を導いた。
  • そのうちの 1 つを解くことで、非定常核形成速度の時間発展を機械的に推定するための簡単な式を導いた。
  • これにより、核形成現象の観察実験における労力・時間等のコストの削減が期待される。

概要

 核形成とは、発泡や結晶化に代表されるように、非常に局所的な領域に新しい熱力学相が出現する非平衡現象のことであり、その定常過程に至るまでの最初期段階は非定常過程と呼ばれる。非定常過程における核形成速度 (非定常核形成速度) は、定常過程における核形成速度 (定常核形成速度) と楕円テータ函数の積で表されることが、すでに知られていた。しかし、楕円テータ函数の持つ豊かな数学的性質を利用して、核形成の非定常過程を解析した研究はこれまで存在しなかった。本研究では、その性質を利用することで、従来の古典的な核形成理論では発見されなかった非定常核形成速度に関する複数の非自明な関係式を導いた。また、そのうちの 1 つの差分方程式を解くことによって、非定常核形成速度の過去から未来にかけての時間発展を機械的に推定するための簡単な式を導いた。これにより、核形成現象の観察実験における労力・時間等のコストの削減が期待される。

 本研究は、九州大学の博士後期課程に在籍する 2 人の大学院生、重富 尚太 氏 (大学院数理学府 数理学専攻 博士後期課程) と西脇 瑞紀 氏 (大学院理学府 地球惑星科学専攻 博士後期課程 / 日本学術振興会 特別研究員 DC1) の雑談からスタートし、大学教員による指導を一切受けることなく自主的に遂行されました。重富氏の専門は数学 (可積分系、離散微分幾何学、テータ函数)、西脇氏の専門は地球科学 (火山学、マグマの化学熱力学、核形成理論) であり、極めて学際性・独創性の高い研究です。2022 年 7 月 14 日に問題を発見、8 月 9 日には論文にまとめて投稿、9 月 29 日には受理、と研究は非常に迅速に進展し、同年 10 月12 日には SN Applied Sciences の電子版にオープンアクセス論文として掲載されました (https://doi.org/10.1007/s42452-022-05189-4)。

※ 本件についての詳細およびお問い合わせ先は以下をご覧ください。

関連先リンク