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徳⽥ 助教らの研究グループが、19 万光年彼⽅の⼩マゼラン雲から星の産声を検出しました。

  • 2022年8月29日(月)

ポイント

  • 太陽系誕⽣よりも遥か昔の環境でどのように恒星 (星) が誕⽣するかが未解明であった
  • 100 億年前相当の状況に近い⼩マゼラン雲で星誕⽣の産声を初めて検出することに成功
  • 産声を⼿がかりに、宇宙の遥か昔の星や惑星の誕⽣過程の解明がさらに進むと期待

概要

 ヘリウムよりも重たい元素のことを天⽂学では”重元素”と呼びます。宇宙が誕⽣した頃は恒星の中で⻑時間かけて起こる元素合成が進んでいないため、軽い元素が⽀配的でした。このように現在の宇宙と⼤きく異なる環境では、どのように星が誕⽣するかは明確にはわかっていませんでした。

 本研究では太陽系よりも重元素量が少なく、約 100 億年前の宇宙の環境を残した場所からの産声を初めて発⾒したことにより、宇宙の進化の歴史において星が誕⽣するメカニズムが共通していることを⽰す結果が得られました。

 九州⼤学 ⼤学院理学研究院の徳⽥ ⼀起 学術研究員/特任助教 (兼・国⽴天⽂台アルマプロジェクト特任助教) 及び⼤阪公⽴⼤学 ⼤学院理学研究科の⼤⻄ 利和 教授をはじめとする国際共同研究チームはアルマ望遠鏡を使って、地球から 19 万光年離れた⼩マゼラン雲に存在する Y246 という原始星 (幼年期の星) を観測しました。その結果、時速 54000km 以上の速さで運動する分⼦のガス流が存在していることを突き⽌めました。これは星の産声に対応する双極分⼦流という現象です。天の川銀河を初めとする現在の宇宙の原始星は、分⼦雲コアと呼ばれる星の卵から誕⽣しますが、この分⼦流を通して余分な回転の勢いを捨てることにより収縮して⼤⼈の星へ成⻑します。これと同様な現象が重元素量の少ない⼩マゼラン雲で⾒られたということは、星の誕⽣する過程が 100 億年の歴史の中で共通していたということを⽰す⼤きな証拠となります。

 双極分⼦流は原始星近傍のガス円盤から噴出すると考えられているため、今回の発⾒は、遥か昔の宇宙環境におけるガス円盤の形成やその円盤中での惑星系の誕⽣について、新たな視点からの調査を進める第⼀歩となるかもしれません。 (https://doi.org/10.3847/2041-8213/ac81c1)

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