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藤原 圭太さんと川村 教授が、近年の豪雨災害激甚化の背景を明らかにしました。

  • 2022年7月26日(火)

ポイント

  • 線状降水帯等による甚大な豪雨災害が九州地方中心に近年頻繁に発生しています。減災・防災の観点から近年の豪雨頻発の背景の解明が求められています。
  • 本研究で、梅雨期の降水量が最も多い九州南部を中心に、今世紀初頭から降水量の年々変動が大きくなり準 4 年変動 (4 年前後の周期変動) が顕在化していることを初めて見出すと共に、その主要因を明らかにしました。
  • 梅雨は 1980~90 年代の安定期から今世紀に入って不安定期に移行しており、数十年規模の大気海洋変動が近年の豪雨頻発の背景にあることがわかりました。気候システムの自然変動の影響を正確に把握することが、逆に地球温暖化の影響を客観的に評価することにも繋がります。

概要

 近年梅雨期において九州地方を中心に、線状降水帯が関係する甚大な豪雨災害が頻発しています。ところが、なぜ豪雨災害の激甚化を思わせるような豪雨が近年頻発しているのかよくわかっていませんでした。本研究で、九州大学 大学院理学研究院所属、日本学術振興会 特別研究員の藤原 圭太 氏 (研究当時) と同大学院理学研究院 川村 隆一 教授は、高精度の降水量推定を可能にした最新の衛星全球降水マップ (GSMaP) を用いて梅雨期の総降水量の近年の変動傾向を調査したところ、梅雨期降水量が最も多い九州南部を中心に、今世紀に入ってから総降水量が年によって大きく変動しており、準 4 年変動が顕在化していることを初めて明らかにしました。

 また他の衛星観測データや気象庁アメダス降水量データも併用した結果、梅雨期降水量の年々変動は 1980~90 年代の安定期から今世紀に入って不安定期に移行していることもわかりました。なぜ今世紀初頭から準 4 年変動が顕在化したのかその要因を探ったところ、熱帯インド洋と西太平洋間の東西鉛直循環に関連した熱帯の遠隔影響が梅雨を変動させる可能性は従来から指摘されていましたが、その遠隔影響が数十年規模で変調していることが主要因の一つであることが見出されました。これらの知見は豪雨被害を軽減するための梅雨降水量の中長期予測の精度向上に資することが期待されます。また梅雨期における豪雨発生頻度や強度の将来予測の信頼性を高めるためには、熱帯インド洋・太平洋の数十年規模の大気海洋変動の動態とその予測可能性を詳しく調べていく必要があります。

 本研究成果は、2022 年 7 月 25 日(月)に国際学術誌「Scientific Online Letters on the Atmosphere」にオンライン掲載 (早期公開) されました。また本研究は JSPS 科研費補助金 (JP19H05696, JP20H00289) の助成を受けました。(https://doi.org/10.2151/sola.2022-029)

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